1月17日、新国立劇場で「2014/2015シーズンラインアップ説明会」が行われた。登壇者は飯守泰次郎(次期オペラ芸術監督)、大原永子(次期舞踊芸術監督)、宮田慶子(演劇芸術監督)、その他に福地茂雄理事長らが出席した。
冒頭、福地理事長が挨拶、今年のキーワードを“グローバル展開”とし、「新国立劇場が世界に羽ばたいていける内容を目指していく。新シリーズの芸術監督3名の共通性は、人格の高さ。「人格の表現」である芸術の責任者として彼らは適任者」と期待をのぞかせた。
また、次期オペラ芸術監督に就任する飯守は「私は何かの力によって、オペラの世界に引き寄せられてきた。新国立劇場のオペラ芸術監督に就任することは、重責であるが楽しみでもある。世界に認められるよう発展させていくことが使命と重く受け止めている。イタリアやドイツ、日本での経験を通じて、最大限の努力で臨んでいきたい」と抱負を語った。
新シーズンのオペラの演目は新制作3、再演7。イタリア・オペラ、ドイツ・オペラを中心に、そのほか、滅多に上演されないが名作のもの、邦人作品から選んだ。なかでも注目公演として新制作の《パルジファル》《マノン・レスコー》《椿姫》があげられる。
《パルジファル》は、世界のオペラ界の重鎮 ハリー・クプファーが演出を手がける。これについて飯守は「ワーグナーの集大成といえる作品で、新国立劇場が取り上げていない唯一のワーグナー作品。オペラ全体で重要な役割をもつグルネマンツ役には円熟の極みであるジョン・トムリンソンを配した。ハリー・クプファーがキャスト表をみて『この歌手陣でやるなら演出してもいい』と言ってくれた」と興奮気味に語った。
《マノン・レスコー》は2011年、3月15日の初日を目前に東日本大震災に伴い公演中止となった演目。この幻の上演をいつか実現したいとの想いから、4年越しに当時と同じキャストで上演される。
《椿姫》は思い切り若い歌手を使い、今年ローマ歌劇場日本公演《ナブッコ》にも出演するアントニオ・ポーリがアルフレード役を歌う。演出ではモダンで美的感覚豊かなヴァンサン・ブサールが新国立劇場に初登場。
演目選びについては、特にキャスティングと演出について努力したという飯守。まずキャスティングについては「歌手の声」を大事に考えた。「どういう声をもっているか」ということにこだわり、声のタイプを細かく分類して、作品や役柄、キャラクターにあった声を見極め選んだ。
演出については「音楽とともに掘り下げ、視覚的に届けるのが演出家の見せ所。名作は様々な解釈がされ、許容範囲が広い。繰り返し上演するには、作品に新しい光をあてることも必要になるが、ただ、ヨーロッパに多く見受けられるように、行きすぎた演出傾向にあるのも事実。意外性、新しいショックを観客に与えようとすると、音楽と対立し、遊離してしまう。演出は演出家に預けているが、議論を重ねながら進めていく」との考えを示した。
飯守は《パルジファル》のほか《さまよえるオランダ人》を指揮する。バイロイトでの経験も豊富で、ワーグナーを得意とする飯守の手腕に期待するむきはおおきく、特にワーグナー作品については大きな期待が寄せられている。多くのファンが待ち望む新国立劇場での『ニーベルングの指輪』上演について飯守は「期待が大きいことは承知している」と述べるにとどまったが、意欲的に検討している様子がうかがえた。
2014-15シーズンのオペラ・ラインアップは下記の通り。
2014年10月《パルジファル》新制作
10月《ドン・ジョヴァンニ》
11〜12月《ドン・カルロ》
2015年1月 《さまよえるオランダ人》
1〜2月《こうもり》
3月《マノン・レスコー》新制作
4月《運命の力》
5月《椿姫》新制作
5〜6月《ばらの騎士》
6月《沈黙》
◆ 2014/2015シーズン オペラ公演一覧
◆2014-15シーズンのオペラ・ラインアップ PDF
なお、1/22(水)に飯守泰次郎 次期オペラ芸術監督による新シーズン演目説明会が行われる。入場無料・自由席・予約不要。
■飯守泰次郎 次期オペラ芸術監督による新シーズン演目説明会
2014年1月22日(水) オペラ《カルメン》マチネ公演終了後
会場:オペラパレス客席
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/news/detail/140110_003737.html
◆新国立劇場 オペラ http://www.nntt.jac.go.jp/opera/