葵トリオ(ピアノ三重奏団)

ピアノ三重奏は様々な要素を楽しめる魅力的なジャンルです

左より:秋元孝介、小川響子、伊東 裕
C)Nikolaj Lund

 2018年9月、世界最高峰ともいわれるミュンヘン国際音楽コンクールのピアノ三重奏部門で、日本人団体初の優勝を果たした葵トリオ。東京藝術大学とサントリーホール室内楽アカデミーで出会ったヴァイオリンの小川響子、チェロの伊東裕、ピアノの秋元孝介の3名(全員関西出身)が16年に結成した当グループは、現在ミュンヘン音楽・演劇大学に所属しながら、個々の活動と常設三重奏団としての活動を両立させている。そして今年6月には初のセッション録音によるCDをリリース。この秋全国ツアーを行っている。

 CDはベートーヴェンのピアノ三重奏曲第1番(作品1-1)とメンデルスゾーンの第2番の組み合わせ。本号発行後の演奏会でも、前者が名古屋の宗次ホール(11/21)、後者が大阪のザ・フェニックスホール(11/20)で披露される。

秋元「ベートーヴェンの作品1-1は、我々の実質的なスタートとピアノ三重奏にとって大切な作曲家のスタートをリンクさせた選曲です」
伊東「メンデルスゾーンの2番は、ベートーヴェンとの調性の関係(共に♭3つ)もありますし、長期にわたって取り組んできた曲なので、ぜひ録音したいと思いました」

 メンデルスゾーンの三重奏曲は1番が有名だが、彼らは2番への思い入れが強い。

小川「1番はソロで始まる旋律的な曲ですが、2番は3人一緒にがっちり弾く場面が多いので、メンバーが固定されたトリオにとってはより魅力的です。それに演奏会での反応も良く、『ぜひCDを』との声を多数いただいていました」
伊東「2番の方が構造的にもしっくりきますし、情熱的な面や疾走感も感じられます。あと第4楽章の最後の感動的なコラールが大きな魅力です」

 ピアノ三重奏で重要なのがベートーヴェンの作品。特に生誕250年の今年は、彼らも全曲プロジェクト(中止)に向けて準備し、前記2公演でも各1曲、びわ湖ホール(11/22)では3曲を演奏する。

小川「ベートーヴェンは、ピアノが大半の旋律を担当していたこの形態を、各声部が効果的に機能する形に変えた作曲家。ピアノ三重奏の魅力を引き出し、発展の礎を作ってくれた恩人です」
秋元「びわ湖ホールで演奏する2番も、作品1ならではの野心やピアノ三重奏をまったく新しいジャンルに変えようとの意欲を感じさせます。そうした人間らしい部分や、深刻な雰囲気がなく、ベートーヴェンのチャーミングな面が顕れている点も魅力ですね」

 彼らはピアノ三重奏の魅力をこう語る。

小川「私は弦楽四重奏も勉強したのですが、ピアノ三重奏は、内向的な四重奏に比べると、オープンでソリスティックで情熱的な曲が多い。それに全員が主役を演じますし、ソロやデュオの要素も楽しめます」
伊東「様々な可能性がある、室内楽の中でも魅力的な形態。弦楽器奏者にとってはピアノの有無でアンサンブルが相当異なります。時にチェロはバスの役割から解放される点が一番の違い。また少人数ゆえの反応の早さも面白さだと思います」
秋元「僕にとっては室内楽の出発点。ピアノが入る(デュオ以外の)室内楽の中でも圧倒的にレパートリーが多く、古典から現代まで名曲があるのが愉しい。それにピアノ好きも弦楽器好きも楽しめる間口の広さがこの形態の良さだと思います」

 21年1月に札幌交響楽団と共演するベートーヴェンの三重協奏曲も要注目。緻密さとパッションを併せ持った演奏で魅了する彼らへの期待は、限りなく大きい。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ2020年12月号より)

葵トリオ 国内ツアー
2020.11/20(金)14:00 あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール(完売)
11/21(土)18:00 宗次ホール
11/22(日)14:00 びわ湖ホール
※葵トリオの最新情報は下記ウェブサイトでご確認ください。
https://aoitrio.com

CD『ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第1番&メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第2番』
マイスター・ミュージック
MM-4078 ¥3000+税