神奈川フィルが2021-22シーズンプログラムを発表

 今年創立50周年の神奈川フィルハーモニー管弦楽団が、2021-22シーズンのプログラム発表記者会見を9月16日に神奈川県民ホール小ホールで行った。登壇者は、理事長・上野孝、専務理事・櫻井龍一、音楽主幹・榊原徹、常任指揮者・川瀬賢太郎の4名。
(2020.9/16 神奈川県民ホール小ホール Photo:F.Iida/Tokyo MDE)

左:川瀬賢太郎 右:上野 孝・理事長

 冒頭、常任指揮者として最後のシーズンを迎える川瀬が「今年はコロナで思うように演奏会ができなかったが、無事来シーズンのラインナップを発表できることを嬉しく思う。来年度は常任指揮者として最後の年となるが、今までと同じように少しでも多くの皆さまに音楽の魅力、プログラムの魅力をお伝えすることができればと思っている」と挨拶した。

 メイン・プログラムである「みなとみらいシリーズ」は、2021年1月から22年10月まで、主会場の横浜みなとみらいホールの長期休館に伴い、名称を「定期演奏会」と変更、神奈川県民ホール、ミューザ川崎シンフォニーホール、カルッツかわさきの3会場で合計9公演実施されることが発表された。

 シーズン開幕を飾るのは川瀬。12年にピューリッツァー賞を受賞したアメリカの作曲家ケヴィン・プッツの交響曲第2番「無垢の島」(日本初演)とブルックナーの交響曲第4番を取り上げる(2021.4/17)。「無垢の島」は、9.11アメリカ同時多発テロに心を痛めたプッツが心の浄化をテーマに作曲。川瀬は「まずブルックナーの4番が先に決まり、調性の相性がいいプッツを選んだ。プッツによる『心の浄化』を経て『魂が行き着く先』にブルックナーがある」と選曲理由を述べた。川瀬はこのほか、サン=サーンスの「動物の謝肉祭」、ショーソンの交響曲とフランスもの中心のプログラムも披露する(21.7/10)。

 5月には次期音楽監督の沼尻竜典が登場。マーラーの交響曲第4番をメインに、21年に没後25年を迎える武満徹の「ノスタルジア」、沼尻の師、三善晃のピアノ協奏曲(ピアノ:石井楓子)を演奏する(21.5/22)。その他、17年、19年に登壇し、楽団員や聴衆から再度の共演希望が寄せられていた新鋭指揮者、カーチュン・ウォン(21.9/11)、最も注目を集めている若手指揮者のひとり、沖澤のどからが登場する(21.11/27)。そしてシーズンの締めくくりは、川瀬によるマーラーの交響曲第8番「千人の交響曲」(22.3/5)。こちらは、創立50周年となる今年の11月21日に行われる予定だった公演。川瀬は「本来なら今頃合唱練習などが始まって、緊張感が高まっている頃だった。でも1年半ほど勉強期間が延びたということ。任期最後に演奏できるのはとても嬉しい」と語った。

 定期演奏会以外にも、「オーケストラ・超名曲集」と銘打った県民名曲シリーズ、音楽堂シリーズがそれぞれ全3回開催される。県民名曲シリーズは、横須賀、座間、横浜の3都市を巡り、熊倉優、原田慶太楼、そして沼尻が登壇する。音楽堂シリーズは、「モーツァルト+(プラス)」をテーマに、1月には川瀬も登場(22.1/22)。気鋭のピアニスト、阪田知樹がモーツァルトのピアノ協奏曲第17番を弾き振りし、指揮者デビューを飾る公演も興味深い(22.2/26)。

 また、創立50周年記念事業のひとつとして今年から始まった、神奈川県内各地を巡る「フューチャー・コンサートシリーズ」は中止公演があったものの、茅ヶ崎公演(8/30)を皮切りにシリーズがスタートしている。「神奈川県に密着した音楽活動」を掲げる神奈川フィルの新たな活動にも注目したい。

 「常任指揮者としての7年間に悔いはない。最後だからと気負わずに臨みたい」と語る川瀬。川瀬と神奈川フィルが積み上げてきた7年間の成果を存分に味わえるシーズンとなりそうだ。

神奈川フィルハーモニー管弦楽団
https://www.kanaphil.or.jp