古典四重奏団 ムズカシイはおもしろい!! ベートーヴェンの時代 2020

創意あふれる初期の傑作群を独自の視点で

手前:川原千真 左:三輪真樹 右:花崎淳生 奥:田崎瑞博
C)F.Fujimoto

 思えば古典四重奏団の「ムズカシイはおもしろい!!」シリーズが2010年にスタートしてから今年で10年。その記念すべき第1回目で演奏されたのはベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲(いきなり!)だったように記憶するが、生誕250年ということはあるだろう、最新のコンサートもまたベートーヴェン。今回は初期の作品18全6曲を取り上げる。

 この作曲家の中期と後期の四重奏曲は言うまでもなくその個性が全面的に開陳された傑作だけれども、モーツァルトやハイドンら先人の影響は明白ながら、形式や楽想の点ですでに独自の工夫が認められるのが作品18。後年の作品ほどの人気はないかもしれないが、聴けば聴くほどに味のある作品群である。これを古典四重奏団がいつものようにレクチャー付きの形式で取り上げてくれるのは誠にありがたい限り。「その1」と「その2」で3曲ずつの2回構成、さらにそれぞれ同一内容で昼と夜に開催されるので時間を取りにくいファンも行きやすいだろう(開催日は別日)。

 この団体の『ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲全集』が2019年度のレコード・アカデミー賞大賞を獲得したのは未だ記憶に新しい。どんな作品を演奏してもそこに潜む革新性や肝となる本質的な要素を確実にトレースする古典四重奏団の演奏は、ともすると軽視されがちな作品18の新しさと面白さを必ずや聴き手に感知させてくれるに違いなく、これは聴き逃せないコンサートとなりそうだ。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2020年9月号より)

その1の昼 2020.9/22(火・祝)14:00 
その1の夜 9/24(木)19:00
その2の昼 10/25(日)14:00 
その2の夜 10/28(水)19:00
近江楽堂(東京オペラシティ3F)
問:ビーフラット・ミュージックプロデュース03-6908-8977 
https://www.bflat-mp.com