東京二期会が2021/22シーズンラインアップを発表〜創立70周年に向けての取り組み、動画配信も実施

ベートーヴェンのオペラ《フィデリオ》の公演を前日に控えた9月2日、東京二期会が主催及び共催オペラ公演の2021/22シーズンラインアップを発表した。新しく就任した公益財団法人東京二期会 理事長・清水雅彦と、同常務理事 兼 事務局長・山口毅、今年11月に上演される《メリー・ウイドー》にハンナ役で出演する嘉目真木子、来年の《ファルスタッフ》のタイトルロールを歌う今井俊輔が登壇した。
(2020.9/2 新国立劇場オペラパレス Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)

左より:山口 毅、清水雅彦、嘉目真木子、今井俊輔

最初に清水理事長の挨拶。「未曾有の状況の中、東京二期会の理事長に就任し、身が引き締まる思い。コロナ禍という困難な状況だからこそ総合芸術であるオペラの享受が高い価値がある。人間的な営みや精神が描かれたオペラ、そこに込められた愛情を伝えていきたい」と述べた。

続いて山口事務局長がラインアップについて演目とトピックについて説明した。
「2022年は二期会の創立70周年にあたり、21年2月の《タンホイザー》公演より、前後3年間にわたり『二期会創立70周年記念公演』と銘打ってシリーズ公演を行う。新シーズンのテーマは“誘惑の綾”。ドラマの上で誘惑がキーとなるオペラが並ぶ。また、二期会は明日から上演する《フィデリオ》をはじめ、いくつかの舞台の動画配信を開始する。YouTubeにより世界各地で二期会の公演を観ることが可能となる。カメラは8台使用し、公演以外のドキュメント的な映像も取り入れた内容のあるものを世界に発信したい」と展望を述べた。

嘉目真木子

歌手2人もコメントを寄せた。
嘉目真木子は「まだまだ予断を許さない状況でオペラという芸術を届けることができるのは嬉しい。来年9月上演の《魔笛》は3度目の出演。二期会のデビューもこの作品だった。役創りに今からワクワクしている」。
今井俊輔も《ファルスタッフ》について「イタリアの師匠(マエストロ)からこのオペラに出るのならファルスタッフ役以外にないよ、と言われた。このオペラにはタイトルロールとフォードのバリトン二重唱があり、そこが聴きどころだと思う。ぜひ味わってほしい」と語った。

今井俊輔


【2021/21シーズンラインアップ】

※出演者などの詳細は決定次第、東京二期会のウェブサイトで順次発表される。

●2021年
[1月]
《サムソンとデリラ》

東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ。ウィーン国立歌劇場、バイエルン州立歌劇場やザルツブルク音楽祭などでの指揮ぶりが注目されるフランス出身の若き逸材、ジェレミー・ローレルの日本デビュー。

[2月]
《タンホイザー》(新制作)

フランス国立ラン歌劇場との提携公演で、キース・ウォーナーの演出。指揮はライン・ドイツ・オペラの音楽総監督を務め、オーケストラコンサートでも活躍するアクセル・コーバーが登場。ワーグナーを得意とし、2013年にはバイロイト音楽祭に《タンホイザー》でデビューしている実力派。14年の同音楽祭での《タンホイザー》はライブCDもリリースされている。

[5月]
《セルセ》(新制作)

二期会ニューウェーヴ・オペラ劇場。指揮者としても活躍する鈴木秀美の登壇。欧州で活躍する振付家・ダンサーの中村蓉が初めてオペラ演出を手掛ける。

[7月]
《ファルスタッフ》(新制作)

テアトル・レアル、ベルギー王立モネ劇場、フランス国立ボルドー歌劇場との共同制作。ベルトラン・ド・ビリーの指揮、ロラン・ペリーの演出。

[8月]
《ルル》(新制作)

今年7月に上演を予定していた振替公演。指揮は現代作品を得意とし、東京二期会公演《金閣寺》(19年2月)でも絶賛されたフランスの新鋭、マキシム・パスカル。演出は世界的に活躍するカロリーネ・グルーバー。《ルル》に初めて取り組むグルーバーの主人公の人物像の掘り下げに注目度は高い。

[9月]
《魔笛》

2015年の舞台の再演。リンツ州立劇場との共同制作で、演出は宮本亞門。プロジェクションマッピングを用いた斬新な舞台は話題を呼んだ。

[11月]
《こうもり》

2017年に行われたベルリン・コーミッシェ・オーパーとの提携公演の再演(演出はアンドレアス・ホモキ)。今回は指揮を人気の川瀬賢太郎が務める。


●2022年
[2月]
《影のない女》(新制作)

東京二期会にとって初演目。ボン歌劇場との共同制作でワールド・プレミエとなる。演出はペーター・コンヴィチュニーで、同オペラはコンヴィチュニーにとって初となる注目の舞台。

[4月]
《エドガール》

東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ。プッチーニの“隠れた傑作”をセミ・ステージ形式で上演。日本でもお馴染みの鬼才アンドレア・バッティストーニのタクトも楽しみなところだ。

[7月]
《パルジファル》(新制作)

聖杯を守る騎士たちを魔法で惑わす、特異なキャラクターの魔女クンドリーの存在感が大きいワーグナーのオペラ。まさにシーズンテーマ「誘惑」を象徴するような大作がフランス国立ラン歌劇場との共同制作で実現する。演出は宮本亞門。指揮はフランクフルト歌劇場の音楽総監督として知られ、ドイツ・オペラを自家薬籠中とする名匠セバスティアン・ヴァイグレ。


東京二期会
http://www.nikikai.net
http://www.nikikai.net/lineup/2021shusai.html
*2020/21シーズン各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。