“ヴェルディの地元”のオペラハウスの熱狂を体感!
この1年、世界中でその生誕200年が祝われたイタリア・オペラ最大の作曲家、ジュゼッペ・ヴェルディ(1813〜1901)。日本でも、フェニーチェ歌劇場、ミラノ・スカラ座、トリノ王立歌劇場などイタリアを代表する名門歌劇場の来日をはじめ、大きな公演が相次いだ。日本のオペラファンのなかには、今年改めてヴェルディの魅力を知った方もあるのではないだろうか。この12月に上映される『ヴェルディ10大傑作 パルマ王立歌劇場ライブビュー』は、ヴェルディ・イヤーの締めくくりにふさわしい企画だ。
というのも今回上映される公演は、ヴェルディの母国イタリアはパルマの王立歌劇場で収録されたもの。パルマはヴェルディの出身地に近く、いわば彼のお膝元。ヴェルディの生誕月にあたる10月には『ヴェルディ・フェスティバル』が開催され、街中には立派な記念碑が建てられている。町のオペラファンにも“ヴェルディの地元”だという自負は浸透しており、彼のオペラにはうるさい土地柄だ。天井桟敷に陣取る筋金入りのファンはマイナーな作品でも熟知していて、小声でハミングが聴こえてくるほど。伝統的な演出を尊重し、“声”に重点を置く好みも、いかにもイタリアらしい。そんなパルマには、イタリアの国宝と呼びたくなる名バリトンのレオ・ヌッチをはじめ、ベテランから新人までお墨付きのヴェルディ歌いや指揮者が集う。今回の映像は、いわば本場中の本場の空気を伝えてくれる映像なのである。
今回選ばれた10作は、どれも粒よりの名演ぞろい。俊英マリオッティの大胆かつ繊細な指揮に、ヌッチとテオドッシュウの熱唱が炸裂する《ナブッコ》。色彩豊かな美しい舞台と、イタリアン・テノールの星メーリの美声に魅了される《仮面舞踏会》。洗練されたゴージャスな演出に、ヴァシレヴァの体当たりの演唱が心を打つ《椿姫》。アルヴァレスやスグーラ、ロマーノら歌い盛りの歌手たちが声を競う《トロヴァトーレ》。御大ヌッチ、イタリアらしい美声の持ち主デムーロ、世界中でひっぱりだこのマチャイゼと三大スター共演の《リゴレット》。超新星バッティストーニの鮮烈な棒に、天下のファルスタッフ歌いマエストリが本領を発揮する《ファルスタッフ》など、どれもわくわくする公演ばかりだ。日本では編集の際にカットされることも多い劇中での「ビス(アンコール)」もちゃんと収録されていて(《ナブッコ》の合唱や《リゴレット》第2幕最後の二重唱など)、イタリアの劇場の熱気を伝えてくれる。《オテロ》は唯一ザルツブルク音楽祭での収録だが、これまた大御所ムーティの指揮というきわめつけの公演だ。ロシアの巨匠テミルカーノフによる「レクイエム」も興味深い。
ヴェルディ・イヤーも残すところあと1ヵ月。このライブビューイングで、アニバーサリー・イヤー最後を飾る忘れられない想い出を、ぜひ。
文:加藤浩子
(ぶらあぼ2013年12月号から)
★12月7日(土)〜28日(土)(休館日の12/9,12/16,12/24を除く)
会場:恵比寿/東京都写真美術館ホール
問:樂画会チケットデスク03-3498-2508
http://www.gakugakai.com
※上映スケジュールは上記ウェブサイトでご確認ください。