日生劇場 舞台フォーラム「オペラ《フィデリオ》 柿落とし公演から半世紀」が開催

左から)高島勲、坂井田操、稲葉直人、鈴木俊朗、小宮正安、三浦安浩

左から)高島勲、坂井田操、稲葉直人、鈴木俊朗、小宮正安、三浦安浩

 11月23日(土)24日(日)、日生劇場開場50周年記念 オペラ《フィデリオ》 が上演される。こけら落し以来の上演となる《フィデリオ》 本番を目前に21日、『日生劇場 第20回  舞台フォーラム 2013 「骨太な演出とその表現者たち」 オペラ《フィデリオ》ー柿落とし公演から半世紀 フィデリオ2013ー』が開催された。
(Photo:M.Terashi /TokyoMDE)

 日生劇場舞台フォーラムは1993年(平成5年)11月に第一回が開催、フォーラムを通じて舞台芸術の魅力に触れてもらい、すこしでも舞台技術者が増えること、そして観劇の多様な楽しみが得られ観客が増加し、ひいては舞台芸術の裾野が広がることを目的としている。舞台フォーラムの最後には舞台上に飾られた大道具、小道具、衣裳などを見学できる時間を設けている。

 フォーラムには《フィデリオ》上演に関わるスタッフのなかから、三浦安浩(演出)、鈴木俊朗(装置)、稲葉直人(照明)、坂井田操(衣装) 、小宮正安(ドラマトゥルク)が登壇、司会に高島勲(日生劇場芸術参与・演出家)が加わり、本公演について熱く語った。

 フォーラム前半では三浦が考える《フィデリオ》のコンセプト、テーマについて説明、そこから装置、照明、衣装をどのように構想し、具現化していったのかを各パネリストが説明した。
 後半ではいくつかの場面を実際の舞台、音楽を使いながら照明効果、装置、舞台転換等の説明が行われた。特に、レオノーレ序曲第3番の音楽が流れる中、緞帳がしまって舞台転換が行われている部分(実際の舞台では見えない)では、実際に舞台上で何が行われているのかを、あえて見せるなど、興味深い試みもなされた。

 

 

★フォーラム要旨★

■三浦安浩(演出)
 《フィデリオ》の根底にあるのは、人間の「絆」だと思う。3.11の震災があったということもあるが、それ以前に、《フィデリオ》には絆という意味合いを感じていた。それがコンセプトの中心。
 水のイメージを多用している。水は人間にとってなくてはならないもので、潤い、癒し、恵となるが、その反面、強く、恐ろしいイメージもあわせ持っている。
 マエストロ 飯守泰次郎と話し合い、当初から第2幕にレオノーレ序曲第3番を入れることにしたことから、演出の根幹として「記憶と予感の物語」、過去と現在という時間軸を往き来することを考えた。
 水のイメージは、叙情的ともいえる自然描写、とりわけ「水」の象徴性を巧みに利用した独特の映像美で知られるロシアの映画監督、アンドレイ・タルコフスキーの作品にもヒントを得ている。

 幕間の休憩の間、観客のみなさんは現実世界に引き戻されてしまう。そこで、第2幕の始まりをどうするかが問題になるが、その点、ベートーヴェンもさすがで、非常に重厚な重々しい曲ですぐさま聴衆を舞台に引きずり込む。そのあたりを考え、第2幕の舞台セットも重厚なもので始めたいと考えた。

 ただ、ここで今日話したことはあくまで我々スタッフ側の考えであって、どう考えるかは、観ていただいた方々がそれぞれで感じとってもらえればいいと思う。

■小宮正安(ドラマトゥルク)
 《フィデリオ》は、16世紀(あるいは18世紀という説も)のスペインのセビリャの刑務所を舞台にしているが、今回は時代も場所も特定せず、ただ刑務所という設定にとどめている。
 18世紀、フランス革命で混沌としていた中、救出オペラが多く作られた。《フィデリオ》も主人公レオノーレが「フィデリオ」という名で男性に変装して監獄に潜入し、政治犯として拘留されている夫フロレスタンを救出する物語から「救出オペラ」のひとつといわれるが、《フィデリオ》は単なる救出オペラではない。「自由」「平等」「民衆の叫び」現代に通じるテーマ性をもったオペラである。

■鈴木俊朗(装置)
 第二次世界大戦中、アメリカ・カルフォルニア州に設けられた、日系アメリカ人が収容された収容所の一つ、マンザナー強制収容所の写真が、本公演の装置を考える上でのすべての始まりだった。
 マンザナー強制収容所はあまり認知されていないが、三浦さんの遠い御親戚が収容されていたこともあり、写真を見る機会があった。マンザナー強制収容所は木造だったため、最初の構想としては木造の装置にし、西洋との対比をさせたかった。第2案は核シェルター、原子力をイメージする装置で、事前に作り三浦さんにみせた。現在の装置のもとは第5案で、石切場をイメージしたもの。
 第2幕目は1幕目とほとんど変わらないが、鍾乳洞のような、斜めに走る2本の結晶(スタッフが険と言っているので今は「険」と通称)を入れることで圧迫感を出し、結晶の世界にフロレスタンが幽閉されている感じを出した。
 水と対比する火、炎の映像が流れるが、これはフィデリオとレオノーレの心情変化を表現している。


■稲葉直人(照明)
(稲葉氏からは照明システムの詳細な設計図、進行表などの資料が提示され、どのようにして光が作られるのかが詳しく語られた。また、後半では実際に舞台装置に光をあて、音楽とともに照明がどのような効果を出しているのかが具体的に示された)

 フロレスタンの登場場面は、かなり舞台を暗くしている。アリアを歌う際は、暗いままでは顔がみえないので、ピンスポット的な照明を当ている。
 監獄にロッコとフィデリオが降りてくる場面は、フロレスタンがいる場所との境界を引くために、照明を斜めからあて、別空間であるような形にしている。

■坂井田操(衣装)

 演出プラン全体(場所、時期など)が架空のものになっているため、それを考慮して、どこにもないデザインを模索した。
 刑務所の刑務官たちは皮を身につけているのが特徴。特にドン・ピツァロは、これまで殺してきたであろう様々な動物の皮をあしらった毛皮を左腕につけている。レオノーレらは強い意志をもった黄土色を、兵士や囚人は個性を消された存在としてモノトーンを基調に、フロレスタンは2年間ものあいだ幽閉されていた感じを出すために、服を部分的に切り、色づけしたり、くたびれている感じを出した。
 最後の地上の場面の民衆の服は、開放や自由をイメージできるいままでと対照的に明るくカラフルな色使いを目指した。

●日生劇場開場50周年記念《特別公演》
オペラ《フィデリオ》
全二幕 字幕付原語(ドイツ語)上演
原作:ジャン=ニコラ・ブイイの戯曲『レオノール、あるいは夫婦愛』
台本:ヨーゼフ・フォン・ゾンライトナー
シュテファン・フォン・ブロイニング
ゲオルク・フリードリヒ・トライチュケ
作曲:ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
2013年11月23日(土・祝)・24日(日) 14:00
日生劇場【地下鉄日比谷駅A13出口から徒歩1分】

指揮:飯守泰次郎/演出:三浦安浩/美術:鈴木俊朗/衣裳:坂井田操/照明:稲葉直人
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団

【配役】
11月23日(土・祝)
ドン・フェルナンド:木村俊光
ドン・ピツァロ:ジョンハオ
フロレスタン:成田勝美
レオノーレ:小川里美
ロッコ:山下浩司
マルツェリーネ:安井陽子
ヤキーノ:小貫岩夫

11月24日(日)
ドン・フェルナンド:大沼徹
ドン・ピツァロ:須藤慎吾
フロレスタン:今尾滋
レオノーレ:並河寿美
ロッコ:斉木健詞
マルツェリーネ:三宅理恵
ヤキーノ:升島唯博

囚人1:伊藤潤(全日)
囚人2:狩野賢一(全日)

■チケット
S 13,000円 A 11,000円 B 9,000円 C 7,000円 D 5,000円 学生券 5,000円
問 日生劇場03-3503-3111
http://www.nissaytheatre.or.jp

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