工藤重典(フルート)

イベールの名協奏曲をハイスペック録音でリリース

C)土居政則

 フルートの工藤重典がイベールの協奏曲を録音した。フルートの名協奏曲。これが初録音というのはやや意外な気も。
「何十回も演奏していますが、協奏曲の録音は、指揮者、オーケストラなど、いろんな条件が揃わないと実現しません。そのなかで、ランパル先生も普及に寄与したイベールの協奏曲を、今回やっと残せたことは感無量です」

 1934年初演の作品。19世紀末から近代フランスを中心に発達・完成したフルートの技術を、すべて結集した作品だという。
「ドビュッシーやラヴェルはじめ、フランスの作曲家たちはフルートの音色を本当によく知っています。イベールの協奏曲は、テクニック、音色の魅力、ソリスティックな華やかさ、あらゆる面でフルートが最高に映える作品です」

 速いパッセージが連続する華々しい両端楽章ももちろんだが、ニュアンス豊かな第2楽章もじつに魅力的。
「フルートの音色の魅力を最大限にひっぱり出して表現しているのが、実は第2楽章だと思います。僕たちフルート奏者にとって一番難しい。第1、3楽章はテクニックが左右する要素が9割ぐらいですから、そこさえしっかりしていればいい。でも第2楽章は非常に精巧に書かれていて、音色、音程、フレーズ、ブレス。全部の雰囲気を出すのが難しいのです」

 パスカル・ロフェ指揮兵庫芸術文化センター管弦楽団との共演。
「ロフェさんとは数年前に僕がオーケストラ・アンサンブル金沢の特任首席奏者だった時期に共演し、そのときから素晴らしい指揮者だと感じていました。まずソルフェージュ能力が完璧。そして実は彼はもともとフルート奏者なんです。だからこの曲もよく知っている。ひょっとしたら自分もさらったことがあるのではないでしょうか。呼吸、流れ、動きを聴いてくれるので、とても演奏しやすかった。
 この曲は、技術面にとらわれて練習曲のように『スムーズ』に演奏してしまうと面白くない。速い音の羅列のなかで何を伝えるのかが、とても大事なんです。今回はロフェさんも助けてくれて、すごくひらめきがあったと思います。練習してきたのとまったく違うひらめき。それがないと演奏は面白くないですから。いろんな面でひらめきました」

 実際、実に変化に富む音色の変化が、フルートの表現の多彩さを伝えてくれる演奏。384kHz/24bitでのハイスペック収録なので、その多様な音色は、CDはもちろん、インターネット配信のハイレゾ音源では、いっそう鮮明に聴き取れるはずだ。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2020年2月号より)

CD『イベール:フルート協奏曲&ドビュッシー:海』
マイスター・ミュージック
MM-4070
¥3,000+税

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