「びわ湖リング」がいよいよ来年3月7日、8日に行われる《神々の黄昏》の上演でフィナーレを迎える。びわ湖ホールが「プロデュースオペラ」として年1回制作してきたワーグナー《ニーベルングの指環》の第3日で“最終作”だ。2017年の序夜《ラインの黄金》に続いて、19年の第2夜《ジークフリート》も三菱UFJ信託音楽賞を受賞し、これまで3作とも完売が続き、この《神々の黄昏》プロダクションへの期待が高まっている。
制作発表が8月6日にびわ湖ホールで行われ、山中隆びわ湖ホール館長、沼尻竜典同芸術監督、そしてグートルーネ役の安藤赴美子と森谷真理(ダブルキャスト/ソプラノ)が登壇した。指揮を務める沼尻は「《リング》は一つの大イベント。世界的にも4作全部を上演できるオペラハウスは限られていて、大変誇りに思う。就任当時からやりたかったもので、いつか4作通しての上演をぜひ実現させたい。ワーグナーのト書きに忠実な、一貫したぶれない演出が行われることによって、音楽と舞台上の動きの齟齬が無くなり、イメージ通りに演奏ができる。オーケストラは京都市交響楽団で、体力と集中力がついてワーグナーに慣れてきた。長年のパートナーとして万全の状態だ」と述べた。
ミヒャエル・ハンペの演出とヘニング・フォン・ギールケの美術・衣裳が創り上げる舞台は、これまでの3作でも精緻に作曲者の意図を汲み取ったもので、コンピューターグラフィックスを駆使して極めて再現性の高いものに仕上がっていた。「初めてこの作品を観る方にも理解の助けとなるはずで、関西初演でもあり、演出家の思想がないとも言われるが、我々は作者の意図に沿ったものをきちんとした形でお見せしたいし、それが支持されていると理解している」と沼尻は力説する。
グートルーネ役の安藤は「この役はとても魅力的。結果的に裏切られるが、ジークフリートへの愛は本物だと思う。情の深い、迷いのある人間的な役」と語った。これまでもびわ湖ホールには節目の公演に登場してきたが、今回は念願の「びわ湖リング」への参加となる。
同役を演じる森谷は「びわ湖リング」に3度目の登場。「グートルーネには愛される要素を持つ女性らしいところがあって、柔らかいイメージがある。これまでの役との違いをどのように出せるかが課題。『まるで映画を観ているみたい』という嬉しい感想をいただいたことがあるが、ぜひ初めてのオペラとして多くの皆さまに体験してもらえるとうれしい」と述べた。
取材・文:小味渕彦之