今年4月、ダニエーレ・ルスティオーニが東京都交響楽団の首席客演指揮者に就任する。それに先立つ1月定期への出演のため来日していたマエストロを囲む記者懇談会が都内で行われ、同楽団・芸術主幹の国塩哲紀とともに就任に至るまでの思い出、そしてこれからのビジョンについて語った。

現在首席客演指揮者を務めるメトロポリタン歌劇場をはじめ、欧米の一流歌劇場・オーケストラで活躍を重ねるルスティオーニ。都響との出会いは遡ることおよそ12年前、2014年の東京二期会《蝶々夫人》で、初共演ながらたちまち意気投合したという。
「リハーサル室に入ってまず、全員の譜面台にフルスコアが置いてあるのを目にして、『これはかなりシリアスな音楽づくりになるぞ』と感じました。大きいオーケストラでありながら、室内楽のような親しさをちゃんと保っている。そして、休憩時間にはスコアを見ながら楽団員同士でコメントし合うなど、ディテールに至るまで作品を深く掘り下げようとするその姿勢が第一印象として残っています」

その後、17年には再び東京二期会での公演を経て都響の定期演奏会に初登場、ベルリオーズの幻想交響曲で鮮烈なデビューを飾った。翌年も続けて登壇し、20年には三度目の定期出演が予定されていたがコロナ禍によりキャンセル。その頃にはフランス国立リヨン歌劇場やアルスター管弦楽団で音楽監督を務めていたルスティオーニとの調整は難航を極め、しばらくは共演が実現せずにいた。しかし数年前、マネージャーから「近い将来、少し時間が作れるようになるかもしれない」という話を聞いた国塩がすかさずオファーを出し、前述の2つのポストを退任し、名誉職に転じたタイミングで都響との新たな関係が実を結ぶことになった。
「プログラムについて国塩さんと話し合う中で、二人とも同じ情熱を共有し、共に歩んでいくことができる相手だと確信しました。もちろん、オーケストラとも非常に良い相性だと感じています。そうしてすべてがうまく動き出したときに、最終的に出来上がる音楽というものは、聴衆のみなさんを素晴らしい旅へといざなうことができるはずです」

新たな旅路の序奏となる就任記念公演で演奏するのは、マーラーの交響曲第2番「復活」(11/27,11/29)。その背景には、この曲のもつ祝賀的な性格だけではなく、ルスティオーニ自身の指揮者としての矜持もあるようだ。
「私は、トスカニーニをはじめとする数々の素晴らしい指揮者を輩出してきた、イタリアという国の人間であることに誇りを持っています。その身にオペラという文化を背負っている部分があるのは確かです。同時に、シンフォニックなレパートリーであっても、“イタリアもの”となんら変わりのない感覚で取り組んでいるのです。
『復活』は、明暗がはっきりとしたドラマを持つとともに、私のキャリアの中で常にともにあった『声』が絡んできます。どんな技術を持っているか、どんなキャラクターなのかをお見せできるショーケースのような作品です。そして、『マーラー・オーケストラ』として名高い都響にとってベストのレパートリーでもあります。記念すべき舞台で、この非常に有名な楽曲を42歳のイタリア人指揮者がいかに料理するか。私たちがこれからどのような未来を見据えているのかを示唆するキーとなるような、そんな演奏を聴いていただけたらと思います」
さらなる先の展望については、リヨン歌劇場のポストの前任者でもあった大野和士・現音楽監督(4月~芸術顧問)の姿勢を受け継ぎつつ、近現代のレパートリーの開拓への意欲も垣間見せたルスティオーニ。都響とのこれからに期待が高まる。

取材・文・写真:編集部
ダニエーレ・ルスティオーニ 今後の出演公演
プロムナードコンサート No.420
2026.11/22(日)14:00 サントリーホール
〇共演
アレクサンドラ・コヌノヴァ(ヴァイオリン)
〇曲目
チャイコフスキー:幻想序曲「ロメオとジュリエット」
ストラヴィンスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ調
ドヴォルザーク:交響曲第7番 ニ短調 op.70
第1058回 定期演奏会 Cシリーズ
2026.11/27(金)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
都響スペシャル
2026.11/29(日) 14:00 すみだトリフォニーホール
〇共演
冨平安希子(ソプラノ)
藤村実穂子(メゾソプラノ)
新国立劇場合唱団
〇曲目
マーラー:交響曲第2番 ハ短調「復活」
東京都交響楽団
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