
静岡市葵区の音楽ホール・静岡音楽館AOIは1月21日、新たな芸術監督の就任を発表した。2005年から約20年にわたり同館を率いてきた作曲家・ピアニストの野平一郎が退任し、26年4月1日付で、ギタリストの村治佳織が第3代芸術監督に就く。同日行われた記者会見には野平と村治が出席。それぞれがこれまでの歩み、今後の展望を語った。
1995年に開館した静岡音楽館AOIは、JR静岡駅前に位置する約600席のクラシック音楽専用ホール。優れた音響特性を生かした公演に加え、数多くの委嘱・初演作品を世に送り出し、地方都市から本格的な音楽文化を発信する拠点として独自の存在感を放っている。
初代芸術監督の作曲家 故・間宮芳生に代わり、同ポストを務めてきた野平。会見では、「音楽ホールは演奏家と聴衆が直接向き合えるかけがえのない場所。メディアが多様化する今だからこそ、生の音楽を大切にしてほしい」と、ホールの存在価値をあらためて強調した。
後任に村治が選ばれた理由については、世代交代に加え、クラシック音楽を社会に伝える力を高く評価したという。
「クラシック音楽の敷居の高さを取り除くことがここ10年間の課題でしたが、村治さんはそのような壁を超えてくださると信じています。施設の特徴を引き継ぎながら若い方にも興味をもっていただけるようなホール創りに期待しています」

村治は就任にあたり、「かわる×つなぐ」を新たな基本理念として掲げた。これまで築かれてきた土台を大切にしながら、子どもから大人までが音楽に出会う場の拡充、若い才能の育成支援、静岡ならではの音楽文化の発信、AOIならではの響きを生かした深い音楽体験の提供、そして“開かれた音楽館”づくりに取り組むとした。
「2023年に私はデビュー30周年を迎えましたが、このホールも昨年で開館30年。私の人生とホールの歴史が混ざり合い、この先どんなことができるのか楽しみです。演奏家としての自分も大切にしつつ、このステージに立つ音楽家と聴衆の皆様をつなげる橋渡し役を担うということは、私の人生をも豊かにしてくれるに違いないと思い、迷わずお引き受けしました」

会見では2026年度前期のプログラムについても発表された。
開館以降、同ホールの専属弦楽四重奏団として活動し、1月17日にラストコンサートを終えたAOI・レジデンス・クヮルテット(松原勝也、小林美恵、川本嘉子、河野文昭)に代わり、26年度からはレジデンシャル・アーティスト制度が始動。近現代作品の演奏に定評のあるピアニスト大瀧拓哉を迎える。9月のリサイタルでは、2005年に同ホールが間宮芳生に委嘱した「エチュードIV~VIーピアノのためにー」(初演:野平一郎)などが披露される(9/26)。
また、新年度の開幕を飾るガラ・コンサートには村治自らも出演。上野耕平(サクソフォン)、幸田浩子(ソプラノ)、田中傅次郎(歌舞伎囃子方)、大瀧ら、多彩なアーティストが一堂に会する(5/30)。6月には、1980年のショパン国際ピアノコンクールの優勝者で、現在は審査員も務めるほか、エリック・ルーやケヴィン・チェンらを育てた教育者としても注目を集めるダン・タイ・ソンのピアノ・リサイタル(6/13)、7月には、新進音楽家の発掘と育成を目指すオーディション「静岡の名手たち」で選ばれた若手演奏家が、東京音楽コンクールの入賞者と競演するコンサート(7/11)など、バラエティ豊かな企画が予定されている。
30年の歴史を経て、新たな舵取りを迎える静岡音楽館AOI。村治佳織のもと、どのような音楽文化を紡いでいくのか、注目が集まる。
文:編集部

