オーケストラを通して知るアジア
アジアは広い。2002年より開催されている《アジア オーケストラ ウィーク》に足を運べば、一口にアジアのオーケストラといっても、そこには多様な文化が息づいていることが実感できるはず。今年は3ヵ国から3つのオーケストラが参加する。
まず、フィリピンからはマニラ・フィルハーモニー管弦楽団が登場。マニラ・フィルは、今回指揮を務める音楽監督ロデル・コルメナールが1996年に設立した若いオーケストラ。プログラムはフィリピンの作曲家ルーシオ・サン・ペドロのパストラール組曲、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」(ピアノ:ディンドン・フィエル)、チャイコフスキーの交響曲第4番。“お国もの”と超名曲の組合せが、楽団のキャラクターを雄弁に伝えてくれそうだ。
アジア太平洋地域の一員として、ニュージーランドからはサザン・シンフォニアがやって来る。サザン・シンフォニアはニュージーランド南端のオタゴ地方に位置する中核都市ダニーデンのオーケストラ。ニュージーランド南端のオーケストラということは、世界最南端のプロ・オーケストラということでもある。設立は1965年。サイモン・オーヴァーの指揮、スティーブン・ドゥ・プレッジのピアノにより、アンソニー・リッチーの「パリハカの思い出」、グリーグのピアノ協奏曲、ブラームスの交響曲第2番が演奏される。アンソニー・リッチーは1960年ニュージーランド生まれの作曲家で、こちらも“お国もの”と有名曲が並べられる。
そして、日本からは山形交響楽団が登場する。山形交響楽団は1972年に設立された東北初のプロ・オーケストラ。たびたび東京公演を開催しているので、首都圏の聴衆にとっても比較的なじみ深い地方都市のオーケストラといえるだろう。音楽監督の飯森範親の指揮のもと、サリエリの歌劇《ファルスタッフ》序曲、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」(ヴァイオリン:松田理奈)、ブルックナーの交響曲第1番という意欲的なプログラムを披露する。
以上の東京オペラシティコンサートホールでの3公演に加えて、今回は盛岡市民文化ホールにて山形交響楽団とサザン・シンフォニアの合同演奏会も開催される。いずれの公演にも新鮮な発見が満ちあふれているにちがいない。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2013年10月号から)
マニラ・フィルハーモニー管弦楽団 ★10月5日(土)
サザン・シンフォニア ★10月6日(日)
山形交響楽団 ★10月7日(月) 会場:東京オペラシティコンサートホール
ローチケLコード33279
山形交響楽団&サザン・シンフォニア 合同演奏会
★10月8日(火)・盛岡市民文化ホール
ローチケLコード23952
問:日本オーケストラ連盟03-5610-7275
http://www.orchestra.or.jp