オリ・ムストネン ピアノ・リサイタル 〜プロコフィエフの神髄を聴く〜

鬼才ピアニストが向けるプロコフィエフへの眼差し

C)Outi Tormala

 指揮者、作曲家、演奏家というように音楽家の役割がはっきりと分業化し、加速したのは近代にいたってからのこと。かつては創作から実演までの一切を引き受ける音楽家像は特別なものではなかったが、近現代以降の複雑な音楽作品や、多面的で大規模なコンサート・シーンにおいては、現実的に容易ならざるものがある。ただ、それをこなす稀有な才能と人望をもった音楽家は今も存在する。その数少ない一人が、1967年生まれの鬼才オリ・ムストネンだ。
 作曲家として、ラフマニノフ、ブゾーニ、ラウタヴァーラらの語法を受け継ぎ、自作を含めた作品群を故郷フィンランドの主要オーケストラや、ケルンWDR響、N響などで指揮。ピアニストとしてはベルリン・フィル、ニューヨーク・フィルなどの楽団と共演し、弾き振りも行う。
 そんなムストネンが主要レパートリーの一つとしているプロコフィエフの作品、それもピアノ・ソナタのみ5作を披露する注目の公演が、いよいよ日本でも開催される(第4、9、1、3、7番という曲順を予定)。張りのある研ぎ澄まされたタッチ、奥行きを感じさせる柔和な音色を駆使し、ロマンティシズムを宿した最初のソナタや、円熟期の鮮烈なダイナミズムを持つソナタ、そして最後に完成させた洗練を極めたソナタを描く。プロコフィエフの小品から協奏曲までをよく知るムストネンが、音楽家としての多層的な視点から、濃密な音楽的時間を立ちのぼらせるに違いない。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2018年12月号より)

2018.12/4(火)19:00 浜離宮朝日ホール
問:パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831
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