インゴ・ メッツマッハー ●指揮

プログラムには一つの文脈が必要です

最初のプログラムから具体的に聞こう。
「『ツァラトゥストラ』で語られるのは、物事に対するまったく新しい見方。それは“自由な精神”であり、《ワルキューレ》のジークムントも“自由な英雄”です。さらに《ワルキューレ》の場面設定は夜ですが、『ツァラトゥストラ』は日が昇る、明るい日差しのもとでの話。その対比もあります。そうしたテーマ性だけでなく、もちろん音楽的に2人の作曲家には通じ合うものがありますし、『ツァラトゥストラ』から《ワルキューレ》へ旅をするような面白さも意図しています」
ちなみに《ワルキューレ》には、メッツマッハーが今年ジュネーヴで行う《リング・サイクル》の主役歌手2人が出演する。ではロシア・プログラムの方は?
「この3人の作曲家は、私にとって非常に重要な作曲家です。スクリャービンと《ワルキューレ》の共通性だけでなく、ムソルグスキーの前奏曲は、シュトラウス同様“日が昇る”点でプログラムを導入します。チャイコフスキーは、神や情熱といった関連性とは別に、私がとても関心を抱いている作曲家。彼の音楽は、悲愴感漂う表現やキッチュな演奏になりがちですが、私はそれを払拭したいと思っています」