N響の気鋭メンバーによるHakuju Hallの室内楽シリーズ「N響チェンバー・ソロイスツ」の第7回「金管五重奏の煌めく響き」が12月に開催される。その中心的存在が首席トランペット奏者の長谷川智之。このシリーズ初の金管アンサンブル公演には、長谷川の他、山本英司(トランペット)、今井仁志(ホルン)、古賀光(トロンボーン)、池田幸広(チューバ)と首席級が居並ぶ豪華な五重奏団が出演する。
「彼らは日頃から組む機会が多いメンバー。個々が卓越した達人で、全員がソリスティックな要素を持って対等にアピールできます。それに同じ楽団ならではのサウンド・イメージの共有も強みで、質量多め、重心低めのサウンドが特徴的。加えて多様なレパートリーに対応する柔軟性も備わっています。ただしオケをそのまま小型化せずに、室内楽的な軽さや繊細さを追求したいと思っています」
プログラムは前後半が対照的だ。
「前半はオール・バロックです。当時の主力だった教会のパイプ・オルガンは、金属の管を振動させる点で金管楽器と同じ。従ってバロック的な音楽は金管とマッチします。また以前当シリーズでマーラーの交響曲第10番(室内オーケストラ版)を演奏した際、残響が多い豊かな響きのホールだと感じたので、この会場でバロックを披露したいと考えました。そして後半は、金管らしさが際立つプログラム。厳かな感じから賑やかな感じに一変します」
前半各曲は「金管の効果が生きる」アレンジもの。
「冒頭の『シバの女王の入城』は金管の定番曲、ヴィヴァルディの協奏曲ヘ長調は、5楽器の声部が際立つ合奏協奏曲的な音楽です。バッハの『パルティータ』第2番の〈シンフォニア〉は鍵盤楽器用の作品で、教会的な雰囲気もあります。そして二人が合体したヴィヴァルディ=バッハの協奏曲ハ短調は、『調和の霊感』第11番に基づく作品。ぜひやりたいと思った聴き応えのある1曲です。これらは、各声部が均等に配分されているので、全楽器発声体が同じ金管に置き換えると魅力が発揮されます」
後半は近代の作品。
「アーノルドの金管五重奏曲は大定番。技巧的難度は高いのですが、金管を生かしたモティーフが連なり、造りに全く無駄のない名曲です。最後の『ポーギーとベス』はエンパイア・ブラスのためのアレンジ。有名曲を多く含む20分ほどの作品です。全体に華やかで、黒人霊歌がジャズに発展していく過程のスイング的な要素もありますし、洗練されたアレンジなので楽しんでいただけると思います」
長谷川が「楽に響くホールゆえに、無理なく演奏してニュアンスを伝えたい」と語る本公演。金管愛好家にも未知の方にもフレッシュな体験が待っている。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年11月号より)
~N響メンバーによる室内楽シリーズ~
N響チェンバー・ソロイスツ 第7回 金管五重奏の煌めく響き
2024.12/12(木)19:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700
https://hakujuhall.jp