印田千裕(ヴァイオリン)と印田陽介(チェロ)の姉弟デュオが開拓するレア編成の秘曲たち

左:印田千裕 右:印田陽介 ©Ayane Shindo

 やや意外な気もするが、ヴァイオリンとチェロのデュオというのは珍しい。東京藝術大学を卒業後、それぞれイギリスとチェコで学んだ印田千裕と陽介の姉弟が毎年開催しているリサイタルが13回目を迎える。テーマは「往古来今」だ。

陽介「この編成には有名な曲が少なくて、よく弾かれるのはラヴェルとコダーイぐらい。でも曲は山ほどあるんです(笑)。少しずつ発掘しながらいろんな曲を紹介しています。

 今回はイタリアのルイジ・ボルギとロシアのイワン・ハンドシキンという18世紀の作品から、カステルヌオーヴォ=テデスコ、そして現代のホリガー、一柳慧まで、さまざまな時代と国の作品を取り上げます。ボルギとハンドシキンは二人ともヴァイオリニストとしても活躍していた作曲家です」

千裕「ボルギは歌劇場ともつながりが深く、イタリアらしい歌心を感じます。ハンドシキンは“ロシアのパガニーニ”として知られた人ですが、今回演奏する『ロシアの愛の歌による変奏曲』は、もともと民謡をもとにした曲で、楽器の技巧的な面よりも、すべてが歌から始まっているということを感じさせます。そんな“歌”の時代から現代に向かっていく、“歌心”も今回のテーマです」

 毎回のプログラムには必ず邦人作品も組み込んでいる。一柳慧の「デュオ・インターチェンジ」は2011年の作品。

陽介「“インターチェンジ”は“交換/交流”という意味で、ヴァイオリンとチェロが完全に同じことを入れ替わって弾いたりします」

千裕「シンプルですがノリのいい作品です。昨年、一柳先生の追悼コンサートに出演した際、この作品を初演したヴァイオリンの新井淑子先生がいらして、お話を伺うことができました」

 耳にする機会の少ない編成だからこそ新たな出会いが楽しめると語る。

陽介「僕らの演奏会は、知らない曲しか出てきません(笑)。初めての出会いを楽しんでほしい」

千裕「逆にいえば、ふだんクラシックを聴かないという方でも、マニアの方と差がなく楽しんでいただけます(笑)。全部同じ編成でも、いろんな曲がある。この2つの楽器でどんなことができるかという幅を感じていただけたらと思います」

陽介「2つの楽器だけなので、音が薄くならないように、どの作曲家もかなり工夫を凝らしています。どう鳴らすかというところから考えなければならない。それぞれのセンスがすごく感じられる編成だと思います」

千裕「見た目的にも響き的にも、ちょっと想像を超えると思いますよ!」
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2024年11月号より)

印田千裕 & 印田陽介 デュオリサイタル 〜ヴァイオリンとチェロの響き Vol.13〜
2024.11/23(土・祝)14:00 王子ホール
問:マリーコンツェルト music@malykoncert.com
https://chihiroinda.com
https://yohsukeinda.com