日本を代表する人気ヴァイオリニストとして国内外で活躍中。昨年5月は「キエフの春音楽祭」に招かれてキエフ国立フィルと共演し、夏にはモスクワ・フィルの日本ツアーに同行し絶賛を博したのも記憶に新しい。
「首都キエフは花が咲き誇る美しい街でしたが、修道院の壁などには紛争で亡くなられた方の写真が一面に掲げられていて、現在も戦闘が続いていることを思い知らされました。そんな状況下でもリヒテルやオイストラフの写真が飾られたホールの中は別世界。音楽祭も満員で、人々の日常生活にクラシックがしっかりと根付いているのを実感しました。その後帰国して、今度はそのウクライナと複雑な関係にあるロシアのモスクワ・フィルと共演しました。どちらの国も音楽を愛する気持ちはやはり同じなのですね。私も『音楽で架け橋になりたい』と思いながら演奏しました」
レギュラー出演中のBSジャパンの番組『おんがく交差点』の放送も100回を超え、春風亭小朝師匠との名コンビぶりや多彩なゲストとの共演コーナーで視聴者を楽しませ、広くお茶の間にクラシックの魅力を伝えている。
「日本人にクラシック音楽をもっと身近に感じて欲しいという想いで続けています。4月から番組も朝8時の放送に変わり、特にお子さんに観てもらえるようになったのでいっそう頑張りたいと思っています。番組では様々なジャンルとのコラボや、初めて目にする楽器とそれに情熱を燃やす演奏家たちとの出会いが楽しみ。どんな相手でも必ず接点があり、その世界にすっと入っていけるので、ヴァイオリン奏者で本当に良かった。毎回、その時に演奏する曲がいちばん好きになります」
今年も魅力的な公演が目白押し。6月には来日する中欧の名門スロヴァキア国立放送交響楽団と共演し、自家薬籠中の一曲であるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を披露する。
「同国のスロヴァキア・フィルとは過去に共演したことがあり、弦の響きがとても素晴らしかったので今回も期待しています。これまでに数え切れないほど演奏している曲ですが、相手によってまったく違う。オーケストラの演奏に導かれて始まる曲なので、先ずそれをよく聴いて向こうの出方を見定めて、どうアプローチするかを決めることができる。だからお互いに言葉は不要なんです。指揮者のマリオ・コシックさんとは初めてですが、何度も来日されていて国際的な評価も高い方なので、今からワクワクしています!」
加えて同じ6月には初の著書である『ヴァイオリニスト、今日も走る!』(KADOKAWA)が発売されるのにも注目。
「コンサートでもアンコールに客席の後ろから登場するためにいつも走っています。この本を読むと、私の元気の源が“ヴァイオリン大好き、人間大好き”だとわかってもらえるはず。未発表の名曲を収録したCD付きなのでぜひ」
11月にはHakuju Hall主催の10年プロジェクト「ヴァイオリン賛歌」の第3回も。今回は“愛”をテーマに、横山幸雄(ピアノ)との豪華共演で、ロマン派の天才たちとその愛から生まれた傑作をトークを交えて贈る。
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ2018年6月号より)
【コンサート】
大谷康子&スロヴァキア国立放送交響楽団
2018.6/24(日)15:00 練馬文化センター
問:コンサート・ドアーズ03-6264-4194
http://www.concertdoors.com/
【書籍】
『ヴァイオリニスト、今日も走る!』
特別CD付 KADOKAWA
¥1900+税
2018.6/15(金)発売
【TV】
『おんがく交差点』
BSジャパン
毎週土曜日 8:00〜8:30