
2025年に演奏活動50周年を迎え、さまざまに音楽の喜びを伝えるヴァイオリニスト大谷康子が、51年目の2月、早速リサイタルを開催する。高崎芸術劇場が主宰する「T-Mastersシリーズ」の公演で、“大家を招く”とのシリーズ趣旨にも合致した、大谷らしい多様性あふれる魅力的なプログラムが用意された。
その“大谷らしさ”には、いくつもの切り口がある。まず「女性作曲家」。明治時代、早期から才能を発揮して最初の文部省留学生に選ばれた、幸田延のヴァイオリン・ソナタ第1番第1楽章。アメリカで最初に成功した女性作曲家といわれる、エイミー・ビーチの「ロマンス」。日米で再評価の著しい、同世代の二人の楽曲が共感豊かに奏でられる。
次に「邦人作曲家」。先述の幸田延に加え、山田耕筰「荒城の月」変奏曲、貴志康一「竹取物語」、外山雄三「日本民謡による組曲」第1楽章と、20世紀の代表的な作曲家たちによる、日本のルーツを主題とする名旋律が並ぶ。
そして、「愛をテーマとする名曲」。クライスラー「愛の喜び」、エルガー「愛の挨拶」でコンサートを始め、友人イザイの結婚祝いに作られたフランクのヴァイオリン・ソナタで締める。愛の名曲の生み出す幸福感。
多くの視点から考え抜かれた、かつ喜びにあふれたプログラム。これらを支えて構築するピアノを、福間洸太朗が受け持つのもうれしい。福間はアルベニス「イベリア」全曲など、意欲的かつ充実の演奏を展開中の名手。大谷と共に作り上げるステージにも期待したい。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2026年1月号より)
高崎芸術劇場 大友直人 Presents T-Mastersシリーズ vol.11
大谷康子 ヴァイオリン・リサイタル
2026.2/22(日)14:00 高崎芸術劇場 音楽ホール
問:高崎芸術劇場チケットセンター027-321-3900
https://www.takasaki-foundation.or.jp/theatre/

林 昌英 Masahide Hayashi
出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。
