チェコ・フィルのメンバーを中心とする弦楽四重奏団の東京ライヴ。3人の作曲家の味わいある佳品を集めたこだわりの演目で、高水準かつローカル色のにじみ出る演奏を聴かせてくれる。チェコの弦ならではのあたたかい音色、おおらかな構えが心地よい。ゆとりはあってもゆるみはなく、弦楽四重奏の喜びを適切に伝えてくれる。欧米の最先端の若手団体の醸す緊張感とはちがう、室内楽本来の親密さはやはり捨てがたい。なかでも母国の2曲の自然な歌とハーモニーの美しさ(特にヤナーチェクにおける情趣)、そしてアンコールのベートーヴェンのホッとする空気感はいまや貴重なもの。
文:林 昌英
【information】
CD『チェコ・フィルハーモニー弦楽四重奏団 ライヴ・イン・東京 2016』
モーツァルト:弦楽四重奏曲第23番「プロイセン王第3番」/ヤナーチェク:草陰の小径にて 第1集(J.ブルクハウザーによる弦楽四重奏編)/マルティヌー:弦楽四重奏曲第7番「室内協奏曲」 他
チェコ・フィルハーモニー弦楽四重奏団
収録:2016年9月、東京文化会館(ライヴ)
ナミ・レコード
WWCC-7870 ¥2500+税