トップ奏者が集結! 荒井英治が導くザ・シンフォニエッタみよし

©大窪道治

 昨年ショスタコーヴィチ没後50年の命日に、2つのヴァイオリン協奏曲のソリストを務めて深き熱演を実現。円熟とともに挑戦も忘れぬ荒井英治が、「ふるさと大使」を務める埼玉県三芳町のホール「コピスみよし」で、指揮者なしのオーケストラ「ザ・シンフォニエッタみよし」をリードする。

 「コピスみよしで毎年のように公演して、三芳町に関わることも多くなり、『三芳町ふるさと大使』のお話をいただきました。このすてきな環境で文化の発展に寄与できればと思い、お受けしました。大切に育むことで本物の文化になっていくと考えています」

 荒井が集めたメンバーは豪華。弦の中心奏者は都響・東京フィルの首席奏者やソリストで、管楽器もオーボエの広田智之を中心にトップクラスの奏者が並ぶ。コンサートマスターとしてリードする荒井は「指揮者なしで挑むのは疲れるけど楽しい」と笑う。

 「オケに所属していたときに“指揮者はいなくてもいい”とか話したこともありますが(笑)、やっぱりいなければ困る不可欠な存在です。特に音楽を通して思想や理念を伝えようとするベートーヴェンでは、音楽の核となるリーダー、つまり指揮者という存在が本来は必要というジレンマはあります。とはいえ指揮者がいない解放感は、何物にも代えがたい。それには自分が明確なビジョンをもって方向性を示す必要があります。メンバーの力とイメージを最大公約数的にまとめるだけではなく、何が見えてくるかを追求したい。自分自身への挑戦でもありますが、これができるメンバーとの達成感は一回味わうとやめられません」

 第13回となる3月公演は、N響首席奏者・長谷川智之とのハイドンのトランペット協奏曲を中心に、珍しいレオポルト・モーツァルト「軍隊嬉遊曲」、そしてベートーヴェン「英雄」。楽しい古典派プロだが、裏のテーマもあると語る。

 「『戦い』です。トランペットという楽器が持つ軍隊のイメージ、『英雄』とナポレオンの深い関係、そしてレオポルトの曲は2本のピッコロにスネアドラムとまさに『軍楽隊』を模した特殊な編成。今の不穏な世界情勢の中で、音楽も時代ごとの社会的背景と無関係ではないことも示したいのです」

 シリーズの一環として1月に開催される長谷川のリサイタルに続き、荒井も2月に同会場でリサイタルを開く。しかも「マニアックな曲を演奏したがる」と自認する彼が、「ありえないほどポピュラーな名曲」を並べる。「古い巨匠たちの時代のような、豊かで心に直接響く演奏を思い出せる機会にできれば」という。コピスみよしで展開される、荒井の様々な思いやアイディア。会場でこそ体験したい。

取材・文:林 昌英

(ぶらあぼ2026年2月号より)

ザ・シンフォニエッタみよし
リサイタルシリーズ Vol.7 長谷川智之 トランペット・リサイタル 

2026.1/25(日)15:00
リサイタルシリーズ Vol.8 荒井英治 ヴァイオリン・リサイタル 
2026.2/23(月・祝)15:00
第13回特別演奏会 
2026.3/22(日)15:00
埼玉/コピスみよし
問:コピスみよし(三芳町文化会館)049-259-3211 
https://www.miyoshi-culture.jp


林 昌英 Masahide Hayashi

出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。