上杉春雄 ●ピアノ

すべての感情が込められた音 すべてが凝縮された響きを目指します

プログラムは、これまでの集大成でありつつ、同時に音楽的な意味が考え抜かれたもの。前半はバッハの「半音階的幻想曲とフーガニ短調」に続き、クセナキスの「ヘルマ」、ベートーヴェンのソナタ第31番が演奏される。
「クセナキスの音楽には、一つひとつの音や響きが完全に独立して自由になった状態を感じます。いわば、我々の体を構成している素粒子が自由に宇宙を飛び回っている状態が音で表現されているような。そこに、現代人だからこそ感じとれる美の世界があるように思います」
「続けてベートーヴェンを聴いていただこうと考えました。このソナタはそれほど規模は大きくないけれど、彼が知る音楽史をすべて盛り込んだ小宇宙です。『赤い』と思っていたリンゴを夕日の光で見れば紫に見えるかもしれないように、このベートーヴェンの音楽を、バッハやモーツァルトからの流れからではない別の角度から聴くことで、また新たな世界の扉が開けたら面白いなと思います」