まだ歌ったことがない歌ってみたい曲があります|ヴィタリの心の歌

「まだ歌ったことがない歌ってみたい曲がありますか?」と時々聞かれることがあります。

…沢山あります。ステージで歌ったことがない曲。家で何でも歌っているから。
初めて18歳のころに歌に興味が出たときは、あまりジャンルや声種と関係なく何でも有名な歌手達の録音と一緒に歌いました。あのころの私の相手はとても立派でした。マリア・カラスからニコライ・ゲッダとパヴァロッティまで、フランク・シナトラからマドンナまで。レパートリーも広かったです! オペラ、カンツォーネ、ミュージカル、ポップス、民謡。カルメンを歌って、ナット・キング・コールの「スターダスト」までも歌いました。素人で本当に自由でした。

「あのアリアはカッコいいな、リゴレットを歌いたい。自分はソプラノなのに」という話もけっこう聞きます。やっぱり、ステージで歌えない曲だけど、歌いたくなるものをそれぞれ皆持ってるね。家でご飯を作りながら、掃除しながら、シャワーを浴びながら歌うもの。

C)Took Shindo

今も私の“シャワー・レパートリー”は広いです。身体も、頭もリラックスして、考えすぎず、本当に誰でも何でも歌えますね。大抵こんなときの歌をあまり人に聴かせたくない、聴かせたら笑われるだけと思うけど、いつかステージで歌ってみたい曲もある。

いつも聴いてる音楽の中で半分以上クラシックかもしれないけれど、いろんなジャンルにはいい曲がある。1950〜1970年代はポピュラー音楽の黄金時代だったと言われている。戦後の世界はいつも早く治るように頑張ってるからと思う。新しい考え、新しいジャンル、新しいアーティストが沢山出てくる。エラ・フィッツジェラルド、ナット・キング・コール、トニー・ベネット、フランク・シナトラなどのレパートリーにはメロディが美しくて、ちゃんとした歌詞の曲が多いですね。

声楽家と他の音楽家の一番大きい違いは言葉を使うこと。これで直接人に話せるので歌詞は大事です。短い時間で曲の世界、ストーリーなどを作らないといけないので内容が浅かったら難しい。何回も聴いてるとまた新しい想像ができて、テキストを違う角度で見てみて、もっと深く理解する。自分のこと、人生のことを考えさせる曲が大好きです。そうして、メロディだけではなく、歌詞で曲を選ぶのです。

ポップスには、ダンスがベースで、身体を動かすのための曲が多くて、こんな音楽にはビートとリズムが一番大事になってきます。それに比べ、バラードやスタンダード・ナンバーというものは、人の心を動かすために作ってあると思います。ちなみに、フランク・シナトラはチャイコフスキーの「ただ憧れを知る者だけが」を英語で録音したことがあって、彼の歌い方でとても素敵なバラードになりました。

いつか私もクラシックではないレパートリーのプログラムを作ってみたい。もちろん、いいステージになるように声に合う曲を選んで、歌い方をジャンルに合わせて、チャレンジとして歌ってみたいです。

シャワーを浴びながらだけではもったいない!

Information
ヴィタリ&松野乃知 
〜With a song in my heart〜

2019.9/8(日)18:30
eplus LIVING ROOM CAFE & DINING SHIBUYA

東京バレエ団入団1年目で主演に抜擢されて以降、国内外様々な舞台でバレエダンサーとして活躍しながら、その歌声にもひそかに定評のあった松野乃知とのスペシャル・ライヴ。
※公演詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://urx.red/XoBc