【CD】日本歌曲 作曲家二十八人選 歴史をたどる詩と旋律/大嶺光洋

 大嶺光洋は様々な社会人経験を積みながら鍛錬を重ね、歌に対するひたむきな愛情を持って演奏活動を続けてきたバリトン。よく響く深みのある声はもちろんだが、詩の解釈と言葉を届ける技術には卓越したものがあり、多くの聴衆を魅了してきた。84歳を迎えての新譜においてもさらにその深化はとどまることを知らない。本盤は日本歌曲史を辿るように選曲されており、大嶺の歌唱と相まって各曲の意義と内容とがより理解できるようになっている。そして〈お菓子と娘〉のチャーミングさから〈落葉松〉のドラマティックな表現まで自在に歌いこなす技術、表現の幅広さに驚く1枚だ。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2024年7月号より)

【information】
CD『日本歌曲 作曲家二十八人選 歴史をたどる詩と旋律/大嶺光洋』

瀧廉太郎:荒城の月/山田耕筰:この道/信時潔:鴉/成田為三:浜辺の歌/多忠亮:宵待草/橋本国彦:お菓子と娘/平井康三郎:ゆりかご/中田喜直:おやすみなさい/團伊玖磨:はる/小林秀雄:落葉松/湯山昭:夕やけのうた/三善晃:ほおずき/木下牧子:幼年 他

大嶺光洋(バリトン)
宮崎芳弥(ピアノ)

コジマ録音
ALCD-9265 ¥3300(税込)