ピアニストの反田恭平が、7月10日、クラシック音楽の新レーベル「NOVA Record」を設立し、17日に都内で会見を行った。
同レーベルは、反田自身が代表取締役社長を務める株式会社NEXUSと、株式会社イープラスの共同事業として発足。アーティスト自らがレーベルを立ち上げるケースは、世界的に見ても各ジャンルで増えているが、日本のクラシック音楽界において著名演奏家個人が自身のレーベルを設立した例はなく、事実上「日本初」の試みとなる。会見では、レーベルロゴ・サウンドロゴも発表された。
反田は、「NOVAとは、ラテン語で『新しい』、英語で『新星』という意味で、現在のクラシック音楽に新しい風を巻き起こすことができたらと思い、命名しました。将来の音楽家たち、子どもたちに、このNOVA Recordを通して世界へ出ていってもらえたら」と力強く語った。「NOVA Record」と単数形になっているのには、アーティスト一人ひとりと向き合っていくという意味が込められているという。
事業パートナーである株式会社イープラスの橋本行秀・代表取締役会長は、共同事業の経緯を次のように述べた。
「プレイガイドも自ら興行を作ったり、セルフプロデュース力をもったアーティストと一緒に制作し、プロモーション、ディストリビューションを考えていく時代になるのではないか。昨年独立した反田くんから、レーベルを作りたいという熱い想いを聞き、我々が模索している方向性とも一致することから、一緒にやろうということになりました」
第一弾のリリースは、ミニアルバム全10種。ヴァイオリンの大江馨、オーボエの荒木奏美、ファゴットの皆神陽太など、反田がプロデュースするMLMナショナル管弦楽団の若手アーティストたちによるディスクで、いずれも反田がピアノ伴奏者兼プロデューサーを務める。これらのCDは、7月24日からスタートするMLMナショナル管のツアー会場のみで限定販売となる。各ディスクは約20分の収録で、500円での販売。反田によれば、さまざまな楽器のディスクを作ることで、子どもたちにそれぞれの楽器ごとの音色を知ってもらう、楽器紹介の意図もあるという。
その他、ライヴ音源の配信も手がける予定で、7月26日のサントリーホールでのMLMナショナル管の公演を録音し、世界に向けて配信する。また、今後は、2台ピアノを重点的にレコーディングしていく予定で、その共演者として務川慧悟が選ばれた。務川とは、2012年に日本音楽コンクールで同時に第1位となって以来の仲という。会見に出席した務川は、反田から2台ピアノの演奏会とレコーディング提案を受け、「迷わずに決断した」と話す。ピアニストとしては「タイプが違う」というが、友人としても互いに信頼が篤いという二人。反田の務川評は「非常に哲学的で詩的」、いっぽう務川の反田評は「スピリチュアルなものを感じる。音楽に魂を売った人のような感じ(笑)」とのこと。
今後は、協奏曲のレコーディングも将来的に考えているそうだ。また、モシュコフスキー、ショパンのエチュードや、小さい頃に弾くハノン、ブルグミュラー、ツェルニーなどの音源制作にも力を入れていきたいという。動画などで運指やコツなどを子どもたちに伝えていくということも考えている。
反田自身のソロ・アルバムについても、これまで多くのCDをリリースしてきた日本コロムビアから独立し、自身のレーベルでレコーディングを行う。将来の計画として、(音楽の)学び舎を作ることを視野に入れているそうで、そこに向けて「経営のことを学び、コンサートの裏側も見ていきたい」と、独立の理由を述べた。「アーティストが増えて、NOVA Recordからインターナショナルに移れるようなアーティストが出れば」とレーベル主宰者としての夢を語った。
NOVA Record
https://www.novarecord.jp/
反田恭平 公式ウェブサイト
https://www.kyoheisorita.com/