深い詩情と精彩に満ちたピアニズム
アレクサンダー・ガヴリリュクは国際的な活躍もさることながら、2000年に浜松国際ピアノコンクールで優勝して以来、日本でも着実に知名度を上げながら人気を獲得し続けている。その精緻な音楽づくり、躍動的かつ深みあるタッチで、爽やかに響かせる古典派の語法から、ピアニズムが最高潮に達した後期ロマン派の表現まで、説得力のあるパフォーマンスで聴き手を魅了する。そんなガヴリリュクが、彼の魅力をたっぷりと堪能できるプログラムを用意して新春の紀尾井ホールに登場する。
前半はなんとも愛らしい選曲で。ガヴリリュクの奏でる澄んだ音色で聴くハ長調のモーツァルトのピアノ・ソナタ第10番は、新しい一年を迎えるにふさわしい。それに続くのはシューマンの「子供の情景」。ガヴリリュクといえば超絶技巧を要する難曲・大曲を弾きこなすイメージが強いかもしれないが、シューマンの詩的な小品世界を、幅広い表現力によって丹念に描いてくれることだろう。
後半は雰囲気をガラリと変えて、彼が得意とするロシアものだ。スクリャービンが独自のハーモニーを追求し始めた時期の傑作ピアノ・ソナタ第5番、ラフマニノフの前奏曲集op.23から第1、5、2番をこの曲順で披露する予定。そして最後はラフマニノフのピアノ・ソナタ第2番(第2稿)。シリアスでドラマティックな3つの楽章を通じて、ガヴリリュクの誇る精彩に満ちたピアニズムをたっぷり堪能したい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2017年12月号より)
2018.1/8(月・祝)14:00 紀尾井ホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp/
他公演
2018.1/16(火) 横浜みなとみらいホール(神奈川芸術協会045-453-5080)