第9回大阪国際室内楽コンクール&フェスタ 審査結果

 5月13日から22日まで大阪・いずみホールで「第9回大阪国際室内楽コンクール&フェスタ」が開催され、各部門の入賞団体が決まった。結果は以下の通り。

■第1部門(弦楽四重奏)
1位 アイズリ・クァルテット(アメリカ)
2位 ユリシーズ・クァルテット(アメリカ)
3位 ヴィアノ・ストリング・クァルテット(アメリカ)
■第2部門(管楽アンサンブル)
1位 ザイーハ四重奏団(フランス)
2位 ニオベ・サクソフォン四重奏団(フランス)
3位 パリ・ローカル金管五重奏団(フランス)
3位 クンスト・クィンテット(ドイツ)
■フェスタ
メニューイン金賞 デュオ・プロコフィエフ・ダヴィティアン(ロシア)
銀賞 デュオ・フュナンビュル(フランス)
銅賞 トリオ・エクリプス(スイス)

5月22日に行われた優勝団体記者発表より
Photo:M.Terashi/TokyoMDE

 3年に一度開催される同コンクール&フェスタは、国際音楽コンクール世界連盟に加盟する「コンクール」と、年齢制限や課題曲がなく世界各国の民族音楽のアンサンブルも対象となり、さらに、聴衆の中から委託された100名の一般審査員が賞を決める「フェスタ」の2つの部門で構成される、世界的に見てもユニークな音楽祭。

 第1部門1位のアイズリ・クァルテットは、アリアナ・キム(第1ヴァイオリン)、三枝未歩(第2ヴァイオリン)、小笹文音(ヴィオラ)、カレン・ウズニアン(チェロ)で構成される。ニューヨークを拠点に、2014年から16年までカーティス音楽院の弦楽四重奏レジデントを務めた。
 5月22日に行われた優勝団体記者発表の席でコンクール審査委員長の堤剛は「一番嬉しかったのは、聴きに来られたお客様がとても増えたこと」と音楽祭としての役割を果たした喜びを口にし、「第1、第2部門とも高い水準で、特にサクソフォンが図抜けていた。第1部門1位のアイズリ・クァルテットと第2部門1位のザイーハ四重奏団は、皆さん、プロフェッシャルなレベル。第1部門では、西村朗先生の作品が課題曲となっていたが、作品の奥深くまで見通した、素晴らしい完成度をみせてくれた。西村先生も大変感激していた」と評した。
 第1部門審査副委員長のマーティン・ビーヴァーも「アイズリ・クァルテットは初めから目立って素晴らしい、プロフェッショナルなレベルの演奏をしていた」と評した。
 アイズリ・クァルテットのメンバーは「日本で演奏するのが私たちの夢だった。メトロポリタン美術館で西村作品を演奏する予定があるので、日本の作品をアメリカでも紹介したい。来年はデビューCD(米New Amsterdamレーベル)を出すので、それに向けて練習していきたい」と口々に語った。

本選でのアイズリ・クァルテット
写真提供:大阪国際室内楽コンクール&フェスタ

授賞式より
写真提供:大阪国際室内楽コンクール&フェスタ
授賞式より
写真提供:大阪国際室内楽コンクール&フェスタ

 第2部門1位のザイーハ四重奏団は、2015年に結成。現在メンバーの4人はパリ国立高等音楽舞踊楽員に在籍中。
 メンバーの一人は「今回のコンクールに参加できるというメッセージを受け取ったときが夢の始まりでした。と同時に、一生懸命練習しなければならないという勉強の始まりでもりました。課題曲に難しい曲が含まれていたので、成長できたと思う。日本の文化を楽しむことができた。フランスからは今まで2つのサクソフォン・クァルテットが優勝していたので、私たちも彼らの後に続くことができてよかった」と喜びを語った。

 フェスタ・メニューイン金賞のデュオ・プロコフィエフ・ダヴィティアンはニコライ・プロコフィエフ(バヤン)とアーテム・ダヴティヤン(ドムラ)によるデュオ。第4回大阪国際室内楽コンクール&フェスタでメニューイン金賞を受賞し現在ノヴォシビルスク音楽院教授を務めるアンドレイ・ロマノフとアンドレイ・クガエフスキーにより2010年に結成された。
 フェスタ審査員長の梅本俊和は「当コンクールのユニークな点が、このフェスタではないかと思っている。正統的なコンクールのシビアさとはまた違って、フェスタは、音楽を楽しめるという特徴がある。第1回、メニューインが提唱して始まったフェスタも今回9回を迎えて、それなりの評価を得ているのではないかと思う。その証拠に、147団体の応募があった第1回から第9回まで、フェスタに参加したアンサンブルは、1,120団体に及ぶ。彼らがフェスタの歴史をつくってくれたことに感謝したい」と語った。
 デュオ・プロコフィエフ・ダヴィティアンは「二人で国際コンクールに参加するのは初めてだった。世界でも例を見ないとても素晴らしいコンクールだと思った。15年前に我々の先生方が優勝しているので、私たちも今回優勝できて嬉しい」と喜びを口にした。

 惜しくも優勝を逃した2位のユリシーズ・クァルテットは、コンクール終了もつかの間、6月11日、一柳慧のプロデュースにより日本デビューを果たす。
 6月11日は、ライヒの名作「ディファレント・トレインズ」を含む、3人のアメリカ人作曲家にフィーチャーした約1時間のコンサートと、聴衆と音楽について自由に語り合うディスカッションを組み合わせたプログラム。17日は、一柳が信頼を寄せる二人のアーティストをゲストに迎え、古典の傑作から一柳作品を含む現代音楽まで披露する。
 ユリシーズ弦楽四重奏団の魅力について一柳慧は次のようなコメントを寄せている。
「素晴らしいアンサンブルです。一人一人がソリストとしての十分な実力を持ちながら、カルテットとしても、卓越した技術に裏付けられた精緻なアンサンブル表現を兼ね備えた驚くべき存在と言えるでしょう」

ユリシーズ・クァルテット
写真提供:神奈川県民ホール

日本室内楽振興財団
http://www.jcmf.or.jp/compefesta2017/

ユリシーズ・クァルテット
6月11日(日)オール・アメリカン・プログラム[ディスカッション付き]
6月17日(土)スペシャル・コンサートwithフレンズ
神奈川県民ホール
http://www.kanagawa-kenminhall.com/