〈歌曲の森〉〜詩と音楽 Gedichte und Musik〜 第21篇・第22篇 ナタリー・シュトゥッツマン シューベルトを歌う

新たな試みでシューベルトの心象風景を描く

©Simon Fowler
 『歌曲(リート)の森』のシリーズは、トッパンホールの自主企画公演の柱のひとつ。文字どおり、ドイツリートに光を当てた貴重な好企画で、2008年のスタート以来、クリストフ・プレガルディエンやイアン・ボストリッジ、マーク・パドモアら、豪華な顔ぶれが次々と登場して、ドイツリートの奥深さを聴かせている。
 現代最高のコントラルト、ナタリー・シュトゥッツマンもその一人。同シリーズへの3年ぶりの登場となる5月のコンサートでは、2夜にわたってシューベルトの歌曲を歌う。
 その第1夜では、シュトゥッツマンが新たなアプローチに挑戦する。それは、シューベルトの600曲の歌曲の中から18曲をチョイスしたプログラムを、友人のスウェーデン人作曲家イングヴァル・カルコフに依頼して室内楽に編曲した伴奏によって歌うというもの。シューベルトの歌曲伴奏を室内楽に、あるいは管弦楽に編曲する試みにはすでに先例もあるが、その成否は編曲自体にかかっている。詩と声楽と伴奏パートが一体となってより高次の芸術世界を生み出すのがドイツリートの大きな特徴。原曲のピアノ・パートの色彩やスケール感が、どのような視座でアンサンブルに反映されるのか興味深い。第2夜は「水車屋の美しい娘」で、こちらはピアノ伴奏。共演は、インゲル・ゼーデルグレン(ピアノ)、四方恭子(ヴァイオリン)、瀧村依里(ヴァイオリン)、鈴木学(ヴィオラ)、大友肇(チェロ)。
文:宮本 明
(ぶらあぼ 2017年5月号から)

第1夜 室内楽伴奏とともに 5/17(水)19:00
第2夜 水車屋の美しい娘 5/19(金)19:00 
トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
http://www.toppanhall.com/