さらに深まる表現力とピアニズムを聴く
2015年にショパン国際ピアノ・コンクールの覇者となったチョ・ソンジンは、その4年前にはわずか17歳でチャイコフスキー国際コンクール第3位も獲得しており、実に幅広いレパートリーと音楽性をもつピアニストである。
特に近年の来日リサイタルではそれを実感させる多彩なプログラムが印象的だった。今年1月にはショパンの「24の前奏曲集」に加え、ベルクとシューベルトのピアノ・ソナタのプログラムで日本全国ツアーを行い、類まれな美音と作品の本質を自然に捉えるピアニズムを披露。さらなる高みに駆け上がっていることを確信させてくれた。
今回のリサイタルは前回ツアーの大好評に応えアンコール公演。新たなプログラムを引っ提げて東京芸術劇場に登場する。まずは最近の公演でも積極的に取り上げているドビュッシー。今回の演奏曲である「子供の領分」と「喜びの島」は、彼の色彩豊かな音色、鍵盤を華麗に駆け巡る鮮やかなピアニズムが存分に発揮されることだろう。
もちろん、彼の真骨頂ともいえるショパンの作品も演奏される。専属契約を結んだドイツ・グラモフォンから昨年リリースされたディスクでも非常に高い評価を得た「バラード」全曲だ。作品に対してひたすらに誠実に対峙し、楽譜が“視える”ような音楽の流れ、強弱、ニュアンスが聞こえてくる4つのバラードを聴いて、さらに深まっていくチョ・ソンジンの表現力と華麗なピアニズムを堪能してほしい。
文:長井進之介
(ぶらあぼ 2017年4月号から)
5/17(水)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp/