【会見レポート】オレリー・デュポン 〜パリ・オペラ座バレエ団日本公演

 “バレエの殿堂”パリ・オペラ座バレエ団の2017年日本公演が3月2日に開幕し、『ラ・シルフィード』と<グラン・ガラ>の2演目が上演される。これに先立ち2月21日、芸術監督オレリー・デュポンの会見が行われた。
(2月21日 Bunkamuraオーチャードホール 取材・文:高橋森彦 Photo:J.Otsuka/TokyoMDE)

 絶大な人気を誇るデュポンは2015年5月にオペラ座を引退。その後16年2月、わずか1年余りで辞任したバンジャマン・ミルピエの後任としてオペラ座の芸術監督に指名され、同年8月から正式に就任した。芸術監督としてのポリシーをこう語る。
「古典に敬意を払うこと、バレエ団のレベル、クオリティに注意を払うこと、そしてダンサーたちがコンテンポラリーに向かって開いた存在であることに留意しました。今日のダンサーは複数の言語を操る人間のようにコンテンポラリーの振付にも開いた存在であるべきであり、さまざまなインターナショナルな振付家と仕事をすることによって成長し、観客にも現在のダンスに対する視線をあたえると思います」

 昨年末の『白鳥の湖』上演時にレオノール・ボラック、ジェルマン・ルーヴェという日本公演でも活躍が期待される新鋭をエトワール(最上位のダンサー)に任命した。
「成長してくれるし鍛錬を積むことをいとわない真面目さのあるダンサーたちです。エトワールには才能と同時に人間的な資質も大切です」
 怪我のため降板した貴公子マチュー・ガニオに代わり『ラ・シルフィード』に主演する若手ユーゴ・マルシャンもホープだ。
「ジェルマンと同世代で23歳です。二人とも違った個性を持ち、ともに将来を有望視されています。新しい世代のダンサーにチャンスをあたえていくことをうれしく思っています」

 今回の演目はミルピエ時代に決まっていたが、すべての作品を踊り神髄を知る。なかでも『ラ・シルフィード』の表題役は映像にも残された代表作の一つで思い出深いという。
「ピエール・ラコットが復元・振付した重要なロマンティック・バレエで身体の使い方が他のバレエとは異なります。何度も踊りましたが、最初は3週間で振付のすべてを覚えなければならず、第2幕のヴァリエーションをインプロのように踊ったことがありラコット氏が苦笑いされていた思い出もあります(笑)」

 <グラン・ガラ>の上演作品に対しても思い入れは深く、『ダフニスとクロエ』にはクロエ役として出演する(日替わり)。現在パリではダンサーとしてオペラ座の舞台に出ておらず、今回は特別な機会だ。
「『ダフニスとクロエ』はミルピエと創った新作で、ミルピエを中心に楽しくて温かだったクリエーションの雰囲気が舞台にあふれ出ていると思います。ジェローム・ロビンズの『アザー・ダンス』は物凄く精密な振付で、一見そうは見えないのですが技術的にも音楽的にも難度が高い作品です。ロビンズとスタジオで過ごした時間が懐かしく思い出されます。ジョージ・バランシンの『テーマとヴァリエーション』に関しては昨秋キューバで初演者のアリシア・アロンソにお会いし話をして質問をする機会がありましたので、今回それが生かされると思います。日本公演の演目の共通項を私なりに挙げるとすればキーワードは“音楽性”です。ラコットもバランシンもロビンズも音楽性において非常に優れた振付家です」
 芸術監督就任後初のツアー公演に向けて意気ごむデュポンのもと、新世代のダンサーたちが珠玉のレパートリーを華やかに踊る注目公演。開幕が待たれる。

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【公演情報】
パリ・オペラ座バレエ団 2017年 日本公演
『ラ・シルフィード』
2017.3/2(木)18:30、3/3(金)18:30、3/4(土)13:30 18:30、3/5(日)15:00
東京文化会館

〈グラン・ガラ〉
『テーマとヴァリエーション』 
『ダフニスとクロエ』 
『アザー・ダンス』
2017.3/9(木)18:30、3/10(金)18:30、3/11(土)13:30 18:30、3/12(日)15:00
東京文化会館

オレリー・デュポンの「ボレロ」 東京バレエ団〈ウィンター・ガラ〉
2017.2/22(水)、2/23(木)各日19:00 Bunkamuraオーチャードホール

演目:『ボレロ』『中国の不思議な役人』『イン・ザ・ナイト』

※公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。 
問 NBSチケットセンター03-3791-8888 
http://www.nbs.or.jp/