音楽堂 ヴィルトゥオーゾ・シリーズ 19 ナタリー・シュトゥッツマン(コントラルト)

室内楽伴奏で味わうシューベルトの歌曲

©Simon Fowler
©Simon Fowler
 世界的なコントラルトとして名高いだけでなく、近年は指揮での活躍も目覚ましいナタリー・シュトゥッツマンだが、5月に神奈川県立音楽堂が企画するヴィルトゥオーゾ・シリーズでは、その歌声で再登場する。
 2014年の同シリーズ第12回ではフランス歌曲のエスプリを味わわせてくれたが、今回は趣を変えシューベルトの歌曲がテーマだ。しかも前回パートナー役を務めたピアノのインゲル・ゼーデルグレンに加え、四方恭子(都響ソロ・コンサートマスター)、瀧村依里(読響第2ヴァイオリン首席)、鈴木学(都響ソロ・ヴィオラ首席)に、クァルテット・エクセルシオの大友肇(チェロ)が入った弦楽四重奏が共演するという豪華バージョン。
 コントラルトの渋い歌声が描き出すのは「白鳥の歌」からの3曲(「セレナーデ」「漁夫の娘」「愛の便り」)の他、「春に」「音楽に寄す」などのしっとりとした名旋律から、死の縁にある娘を甘いコラールが誘惑する「死と乙女」、情念の昇華をドラマティックに映し出す「若い尼僧」など全18曲。シューベルトのリートの魅力を余すところなく汲み尽くす選曲で、最後ははじけるような「ミューズの子」で閉じる。
 多数の楽曲で構成されたリサイタルの場合、個々の作品のバラエティーだけでなく、通しで聴いた時の選曲の妙を見つけることも大いなる楽しみだが、今回はその合間に、さらに「ピアノ三重奏曲第1番」のスケルツォや「ロザムンデ」(弦楽四重奏曲第13番)のアンダンテ楽章が挟まれている。器楽が加わることで演奏会の奥行きも、そこから受ける感興も一層増すことだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ 2017年2月号から)

5/13(土)15:00 神奈川県立音楽堂
問:チケットかながわ0570-015-415
http://www.kanagawa-arts.or.jp/