ハーゲン・クァルテット

室内楽の極地を示す“神聖な儀式”

©Harald Hoffmann
©Harald Hoffmann

 バロック音楽から現代の作品に至るまで、幅広い時代・様式の作品をレパートリーにもち、それを繊細かつ真摯な態度で音に作り上げていくハーゲン・クァルテット。メンバーは全員が「パガニーニ」と称されたストラディヴァリウスを演奏し、その透徹した響きによってベートーヴェンをはじめとする名作群へ新しい光を当ててきた。その上で、“神聖な儀式”とも言えるような一夜が、この9月14日に用意されているのだ。
 J.S.バッハ、ショスタコーヴィチ、そしてベートーヴェンの作品が並ぶプログラムは、弦楽四重奏団のコンサートであるなら珍しくはない。しかし、そこに「フーガ」というひと筋の光が差し込むことで、プログラムはさらに輝きを増すことだろう。J.S.バッハの「フーガの技法」より選ばれた4つの「コントラプンクトゥス」は、純粋に美しいフォルムをもったフーガの具現化。1960年に作曲・初演されたショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番は、冒頭から作曲者の音楽的刻印である「D-S-C-H」というモティーフが登場し、旧作をコラージュしながら「ファシズムと戦争の犠牲者」を追悼するという作品(最終楽章=第5楽章もフーガ!)。そして後半は長大なベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番に「大フーガ」を加えるという、室内楽の極地を見せてくれるようなプログラム。すべての感覚をオープンにし、あらゆる響きを聴きとりたい時間と空間が実現する。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ 2016年8月号から)

9/14(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
https://www.japanarts.co.jp