フィンランドの歌曲は日本人に愛されると思います
7月28日に初アルバム『人生に』をリリースするバリトンの井上雅人。7月24日には、今年5月にアルバム録音を行ったsonoriumの後援で、同ホールにて記念リサイタルを行う。アルバムは前半にオペラ・アリアやイタリア歌曲、後半には珍しいフィンランドの作曲家の作品が並ぶが、記念リサイタルのプログラムもCD収録曲から。ピアノはCD録音も共演の小瀧俊治、ヴァイオリンはヤンネ舘野。
「フィンランド歌曲に取り組んでいる人はあまりいないので、ぜひ紹介したい。海に囲まれた豊かな自然を背景に生み出されたフィンランド歌曲は、メロディがきれいで日本歌曲に似た雰囲気もあり、きっと日本人に愛されると思うんです」
山形交響楽団メンバーであり、名ピアニスト舘野泉を父に持つヴァイオリニスト、ヤンネ舘野と知り合ったことが、井上がフィンランド音楽に魅了されるきっかけ。ヤンネの母であるメゾソプラノ歌手マリア・ホロパイネンのレッスンを受けるため、首都ヘルシンキに2011年春に赴き、その後日本とフィンランドを行き来しながら勉強を進めた。今回のリサイタルではシベリウス、同時代のメリカント、そしてシベリウスの愛弟子だったクーラの作品をとりあげる。
「シベリウスはスウェーデン系フィンランド人なので、歌曲の多くはスウェーデン語で書かれています。有名な作品も多いですが、歌うのは難しい。メリカントはピアノ曲などが知られていますが、何よりも旋律が美しい。クーラは内戦の時代に生きた人なので、暗くて情熱的な作品が多い。三者三様の音楽をご紹介したいです」
出身は山形県。中学生の時に、趣味で合唱を学んでいた母親に誘われ「第九」の合唱に参加、すっかり歌の世界に魅了された。山形北高校音楽科に進み東京芸大へ。その時点で「プロの声楽家になる」と決めていたそうだ。ピアノやヴァイオリンなどと違い、声楽は比較的年齢がいってから進路を決めたという人が多いが、井上は十代の頃から声楽一筋だったことになる。
「東北人なので、どちらかというと社交的に人間関係を広げていくというのは苦手(笑)。不器用ですが、ひとつのことをコツコツ続けていくタイプなんです」
その言葉通り、真面目に音楽に取り組んでいる姿勢には好感が持てる。今回のアルバム収録に遮音防音も含め、録音のための設備も万全に整った小ホールsonoriumを選んだのは、「自然な感じでライヴ録音に近い生の歌声を届けたい」という思いから。木の床と高い天井を持ち、音響に優れたsonoriumで、井上雅人の「今」を聴くリサイタルにぜひ足を運びたい。
取材・文:室田尚子
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年7月号から)
7/24(日)18:30 sonorium
問:080-5431-5484(井上雅人後援会)/e-mail:laulu.concert@gmail.com
http://www.masatoinoue.com
http://www.sonorium.jp