異色のコラボで描く“エロスと救済”の世界
NBAバレエ団は、2012年に久保綋一が芸術監督に就任して以来、『ドラキュラ』や『HIBARI』など幅広い客層に向けて目新しい作品を次々に上演、独自の路線を突き進んできた。その勢いは止まることを知らず、来る5月には、気鋭の日本人スタッフによる新作バレエ『死と乙女』を初演する。世紀末ウィーンの画家エゴン・シーレの同名の名画をモティーフに、太鼓とピアノの生演奏による20分程度の作品。久保監督の下に、和太鼓奏者の林英哲、作曲家でピアニストの新垣隆、振付家の舩木城という異色の顔ぶれが集まり、究極のセッションが展開される。本公演の記者会見が行われ、それぞれが意気込みを語った。
企画を立ち上げた久保は「昨年創立20周年を迎えたバレエ団にとって、この作品は新しい幕開けにふさわしいものになると信じています。オール・ジャパン・メイドで日本から世界に発信できる作品をと切望していた折に、林さんや新垣さんと出会うチャンスがあり共演を快諾していただけました」
和太鼓の魅力を世界に広めた林は、実は舞踊とも縁が深い。
「NBAバレエ団と共演するのは初めてですが、舞踊とはこれまでもコラボレーションをしてきました。バレエも一通り習い、日舞は花柳流の名取りでもあるので、別の世界と共演するという感覚はなく、楽しみにお引き受けしました」
林の推薦で作曲を担当することになった新垣は、今や多方面で大活躍。
「バレエ音楽の作曲は初めてですが、小さい頃からバレエには興味があったので、願ってもない機会です。曲はまだ準備段階。ストラヴィンスキーを意識し、林英哲×山下洋輔のコラボレーションをモデルに、太鼓とピアノの共演の多様性を表出してみたい」と意欲を燃やす。
そして振付を担当する舩木城は、久保が全幅の信頼を置く“戦友”とも言える旧知の間柄。
「僕は構想を練るとき音楽を聴くことからスタートするので、完成形を見ないうちはどうなるか分からないけれど、きっとステキな作品ができそう。ストーリー性はないが自然に物語が立ち上がるような、明るくはないがどこかに救済を感じさせる作品にしたい」と期待に胸を膨らませている。
公演は、Act1が林と「英哲風雲の会」の和太鼓演奏、Act2がライラ・ヨーク振付でNBAバレエ団のメンバーがバレエ版アイリッシュ・ダンス『ケルツ』を再演、Act3が『死と乙女』という3部構成。エネルギッシュなスピリッツが炸裂しそうだ。
文:渡辺真弓
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年4月号から)
5/27(金)19:00、5/29(日)13:00 17:00 北とぴあ
問:NBAバレエ団04-2937-4931
http://www.nbaballet.org