ジュリアード弦楽四重奏団

大御所クァルテットが聴かせる“古典”と“新作”

©Simon Powis
©Simon Powis
 「新しい作品を偉大な作品かのように、偉大な作品をあたかも新しい作品のように演奏する」をモットーに、室内楽シーンに新たな地平を切り拓いて来た“アメリカの至宝”ことジュリアード弦楽四重奏団が、結成70周年を迎えた。節目に行うアジア・ツアーに携えるのは古典と新作が交錯する、彼ららしいプログラム。42年にわたって在籍してきたチェロのジョエル・クロスニックにとっては、メンバーとして日本の聴衆の前に姿を見せる、最後の機会ともなる。
 1946年にジュリアード音楽院の学長で作曲家のウィリアム・シューマンの提唱で、同音楽院の教授らで組織され、メンバー交代で常に新鮮な感覚を入れてきた。これまでに新作初演から古典まで、500曲以上を取り上げ、100枚以上の録音を発表してきたが、明晰な作品分析に基づく知的な演奏という根幹だけは、決して揺らがない。2011年からは第1ヴァイオリンに俊英ジョセフ・リンが加入。名門集団は、新たなタームを迎えている。
 今回のステージは、モーツァルトの第19番「不協和音」とドビュッシー、2つの佳品が大枠に。ここへ、アメリカの作曲家リチャード・ワーニック(1934〜)による弦楽四重奏曲第9番の日本初演が挟み込まれる。この新作では、トーン・クラスターの手法や、ダンテ「神曲」の符牒を採り入れつつ、明瞭さや嘆きの感情が表現されると言う。また、今回が勇退ツアーとなるクロスニックは「日本での公演は、宝物のよう。その聴衆との出逢いは、忘れがたい経験を与えてくれた」とのメッセージを寄せている。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年6月号から)

6/9(木)19:00 京都コンサートホール
アンサンブルホールムラタ
問:京都コンサートホールチケットカウンター075-711-3231
6/10(金)19:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061