
2026年12月、在京プロオーケストラの中でいち早く「第九」を取り上げるのは東京交響楽団の「東京オペラシティシリーズ」。前半に、今年没後30年を迎えている武満徹の合唱作品を置き、「受け継がれる声」というテーマで開催される。
武満の声楽作品には、映画やドラマ、舞台などのために書かれたものが数多くある。今回演奏される〈翼〉と〈小さな空〉もそうした曲で、武満自身が編曲した「混声合唱のための『うた』」と題する12曲から成る合唱曲集に収められている。〈翼〉は1982年に上演された舞台『ウィングス(WINGS)』の劇中曲を編曲したもの、〈小さな空〉は1962年の連続ラジオドラマ『ガン・キング』の主題歌。もう1曲の〈MI・YO・TA〉は、1950年代に武満が黛敏郎のアシスタントをしていた時代にメロディを書いた作品で、それに谷川俊太郎がテクストを書いて出来上がった。今回演奏されるのは、沼尻竜典が合唱用に編曲したもので、武満の七回忌にあたる2002年に初演されている。沼尻の指揮のもと、東響コーラスがどんな武満ワールドを生み出してくれるのか、期待が高まる。
一方「第九」のソリストには、ソプラノの船越亜弥、メゾソプラノの山際きみ佳、テノールの澤武紀行、バリトンの池内響という今をときめく俊英4人が集結した。このメンバーを見ていると、近年の声楽界の世代交代をひしひしと感じる。毎年耳にする「第九」だが、こうした若い歌手たちで聴けるというのも、また新たな楽しみのひとつである。
文:室田尚子
(ぶらあぼ2026年11月号より)
沼尻竜典(指揮) 東京交響楽団 東京オペラシティシリーズ 第155回
2026.12/4(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
https://tokyosymphony.jp

室田尚子 Naoko Murota
東京藝術大学大学院修士課程(音楽学)修了。東京科学大学・昭和音楽大学非常勤講師。NHK-FM「オペラ・ファンタスティカ」レギュラー・パーソナリティ。オペラを中心にアーティストのインタビューや演奏会の紹介記事、エッセイなどを手がけるほか、ミュージカル、ロック、少女漫画などのジャンルでも執筆活動を行なっている。著書に『オペラの館がお待ちかね』(清流出版)、共著に『ヴィジュアル系の時代 ロック・化粧・ジェンダー』(青弓社)など。

