11月4日、NHK交響楽団は、2028年9月に音楽監督に就任するトゥガン・ソヒエフの記者会見を開催した。来日中のソヒエフが登壇し、就任の経緯やN響への思い、今後の抱負を語った。

1926年の創立から今年で100年を迎えたN響。新たに音楽監督に就任するソヒエフは、2027年のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサートで指揮を務めることが決まるなど、世界の第一線で活躍する指揮者の一人。N響とは2008年に初共演し、2013年に定期公演に初登場。以来、共演を重ね、信頼関係を築いてきた。音楽監督の任期は2028/29シーズンから3年間となる。
会見ではまず、N響芸術主幹の西川彰一が就任の経緯と今後への期待を語った。
「ソヒエフを将来のタイトル指揮者の候補として明確に意識したのは、2017年にプロコフィエフの《イワン雷帝》を演奏した頃でした。その後、彼が音楽監督を務めていたトゥールーズを訪問するなど、対話を重ねてきました。N響の持ち味は『ドイツの伝統に根差した重量感のあるサウンド』ですが、彼ならその強みをうまく引き出しながら、オーケストラをより自由に解放してくれると思います。演奏を聴いていても、ふっと重力が軽くなるような感覚があります。次の100年に向けてN響をさらなる高みに導いてくれる指揮者だと確信しています」

続いて登壇したソヒエフは、就任を引き受けた理由やN響の個性について、次のように語った。
「日本を代表する素晴らしいオーケストラであるN響の音楽監督を任せていただけることを、大変光栄に思っています。
2008年に私が初めてN響と共演したとき、このオーケストラが持つ『サウンド』は、私自身が指揮者になりたいと思った、その原点にある『サウンド』と通じていると感じました。共演を重ねるたびにその思いは確かなものになり、今回のオファーを心から喜んでお受けしました。
世界のオーケストラが次第に似通っていくなかで、N響は独自の個性をしっかりと保っています。歴代の偉大な指揮者たちが築いてきた伝統が、今もその『サウンド』の中に聴こえてくるのです。現代的な柔軟性を持ちながら、長年培ってきた独自の音を守り続けている。これは本当に素晴らしいことです」

自身の音楽観にも触れながら、N響との今後の展望を語った。
「私がまだ24歳の学生だった頃、教えを受けていたユーリ・テミルカーノフから『指揮者という職業は、50歳を過ぎてから始まるものだ』と言われました。当時はその意味がまったく理解できませんでしたが、自分自身が50歳に近づいた今、先生の言葉が正しかったと感じています。
偉大な作品には、準備が整って初めて向き合うべきものがあります。音楽家の使命は、過去に生きた偉大な作曲家たちと、今を生きる聴衆を結びつけることです。そのためにも、一つひとつの作品に謙虚に向き合っていきたいと思っています。
N響とはドイツ音楽の伝統を大切にしながら、新たな可能性を探っていきたいと考えています。特定の作曲家のツィクルスや演奏会形式のオペラ、若い日本人作曲家の紹介など、さまざまなアイディアを話し合っているところです。また、ヨーロッパの聴衆にも、この素晴らしいオーケストラをもっと知っていただきたいと思っています。
これまでの100年で築かれた伝統を守りながら、これからの100年に向けて、より広い視野を持って新たな可能性を探っていきたい。N響とともに音楽を作っていくことを、今からとても楽しみにしています」

創立100周年という大きな節目に、新たな音楽監督を迎えるN響。長年の共演によって育まれた信頼関係を礎に、ソヒエフとN響がどのような音楽を生み出していくのか。次の100年に向けた新たな歩みが始まろうとしている。
写真・文:編集部
NHK交響楽団
https://www.nhkso.or.jp

