新星ジャズピアニスト 壷阪健登がジョージ・ガーシュウィンの名曲とともにめぐる神奈川の旅

©廣田達也

 神奈川県横浜市生まれ、今、若手ジャズピアニストとしてにわかに注目を集める壷阪健登が、ジャンルを越えて新たな音楽との出会いを生み出すシリーズ「C×JAZZ」に出演。ガーシュウィンをテーマとしたプログラムで、弦楽クァルテットと神奈川県内をまわる。

 壷阪は、慶應義塾大学を経てバークリー音楽大学に留学。2019年に卒業後、アメリカで活動を始めたが、パンデミックのため帰国を余儀なくされた。

 「ジャズピアニストとして活動するのは難しいかもしれない、ポップスの作曲などに転向すべきかと思いはじめていた2021年末のある日、六本木のジャズクラブにトリオで出演していました。お客さんは数人。僕は客席に背を向けて弾いていたので、挨拶をしようとマイクをとって前を向いたら、カウンターのところに小曽根真さんがいらしたのです」

 その出会いをきっかけに、次世代を紹介する小曽根のプロジェクト“From OZONE till Dawn”に参加し、活躍の場を広げた。

 「そこから、大きな会場でオーケストラと『ラプソディ・イン・ブルー』を弾く機会などが急に訪れたのです。遠くまで届くようにフルコンサートグランドを鳴らし切るにはどうしたらいいか、クラシックの先生について一から学び直しました。今はベートーヴェンをたくさん課題に出されていますが、その中で、楽譜に書かれていることをちゃんと弾き、耳でよく聴いて次の判断をしていくことがいかに大切か、改めて学んでいます。これはジャズの即興演奏にも通じることです」

 今度の「C×JAZZ」では、前半がソロ、後半には弦楽クァルテットとへ調の協奏曲をはじめとする名曲を披露する。

 「へ調の協奏曲第1楽章をリダクションするためにガーシュウィンのスコアを見たら、対旋律などものすごく緻密で、音を書くことへの情熱を感じました。彼が自らのヒットソングをアレンジし直した小品集を見ても、内声など全部作り直していて、作曲家としての執念が伝わってくるのです」

 当日は自作の新曲も披露する予定の壷阪。ジャンルを越え、枠にとらわれずに活動する新世代を担う存在の一人として、ガーシュウィンへの尊敬は強い。

 「土壌は小曽根さん、そしてさらに一世代前の山下洋輔さんなどが切り拓いてくださいましたが、もっと遡るとその始まりはガーシュウィンです。彼の中にはニューヨークに生まれたユダヤ人というルーツが太い幹としてあり、さらにとんでもないメロディメーカーとしての才能があったから、どこに越境していってもブレることなく音楽を広げられたのでしょう」

 公演が行われるのは、座間市、鎌倉市、開成町、川崎市の4会場。今後がますます楽しみな新星の音を聴いておきたい。

取材・文:高坂はる香

(ぶらあぼ2026年11月号より)

C × JAZZ Vol.2 壷阪健登 × ジョージ・ガーシュウィン
2026.12/4(金)19:00 ハーモニーホール座間(小)
12/5(土)15:00 鎌倉芸術館(小)
12/12(土)15:00 開成町福祉会館 多目的ホール
12/13(日)15:00 新百合トウェンティワンホール
問 チケットかながわ0570-015-415

https://www.kanagawa-kenminhall.com


高坂はる香 Haruka Kosaka

大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動。雑誌やCDブックレット、コンクール公式サイトやWeb媒体で記事を執筆。また、ポーランド、ロシア、アメリカなどで国際ピアノコンクールの現地取材を行い、ウェブサイトなどで現地レポートを配信している。
現在も定期的にインドを訪れ、西洋クラシック音楽とインドを結びつけたプロジェクトを計画中。
著書に「キンノヒマワリ ピアニスト中村紘子の記憶」(集英社刊)。
HP「ピアノの惑星ジャーナル」http://www.piano-planet.com/