
右:マキシム・ヴェンゲーロフ ©Davide Cerati
「王道」「名曲」「巨匠」といった言葉を安易に重ねるのは気をつけたいのだが、この公演は許していただくしかないだろう。10月の東京フィル定期演奏会。名誉音楽監督のチョン・ミョンフンの指揮、マキシム・ヴェンゲーロフのヴァイオリン独奏。シベリウスのヴァイオリン協奏曲、ベートーヴェンの交響曲第7番。世界的巨匠と世界的名手による超名曲のプログラム。これ以上ないほどに盤石、王道のプログラムである。
ヴェンゲーロフは長く世界のトップを走り続ける名ヴァイオリニストで、その活躍ぶりは広く知られている。昨年秋には東京フィルのヨーロッパ・ツアーでも共演しており、今回は1年前の欧州での熱気と名技を、東京にも伝える好機となる。しかも楽曲はシベリウス。世界の名匠たちの熱き共演にひたすら浸るのみ。
さらに本公演の王道感を増すのは、後半のベートーヴェン第7番。言わずと知れた名曲であり、リズムの積み重ねが生み出す興奮の巨大さは、いまだ比類がないもの。チョン・ミョンフンと東京フィルによる第7番は、これまで幾度も熱狂を生み出してきた得意曲。彼らの7月《カルメン》は力まず振っても反応は鋭敏、凄まじくも美しいサウンドが引き出されて、コンビのさらなる深化ぶりが顕著だった。秋の本公演でもさらなる境地が明らかになるだろう。
とにかくこの定期は大船に乗ったつもりで、会場の客席に座るだけでいい。“クラシック音楽の歓び”を心ゆくまで堪能する時間になる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2026年9月号より)
チョン・ミョンフン(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
第1037回 サントリー定期シリーズ
2026.10/15(木)19:00 サントリーホール(完売)
第177回 東京オペラシティ定期シリーズ
10/16(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
第1038回 オーチャード定期演奏会
10/18(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522
https://www.tpo.or.jp

林 昌英 Masahide Hayashi
出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。


