『近松DANCE弐題』

現代を生きるダンサーが体現する近松の世界

『エゴイズム』(2011)より ©鹿摩隆司
『エゴイズム』(2011)より ©鹿摩隆司
 『近松DANCE弐題』は、江戸時代に活躍した戯曲作家、近松門左衛門をテーマにした新国立劇場のコンテンポラリーダンス・シリーズ。Aプログラムでは、加賀谷香 Dance-SHAN振付『エゴイズム』を上演。2011年に初演を迎え、日本ダンスフォーラム賞を受賞するなど高い評価を集めたステージの待望の再演である。数ある近松作品のなかでも、加賀谷が着目したのは「曽根崎心中」。近藤良平、佐藤洋介、舘形比呂一、辻本知彦と、個性派揃いのキャストを相手に、ダンスとギター、語りを交えて“エロスと死”を赤裸々に映し出す。
 Bプログラムには、日本舞踊の吾妻徳穂、クラシック・バレエの酒井はな、フラメンコの蘭このみと、異なるジャンルでトップを走る3名の女性ダンサーが登場。蘭このみは、近松の『冥土の飛脚』に登場する遊女・梅川を題材にした『梅川』を披露。遊女の切ない想いを、ギターとカンテ、フラメンコのステップにのせ熱く訴える。酒井はなが踊る『近松リポーターズ』は、ザ・フォーサイス・ カンパニー出身の島地保武による振付。近松作品に見る人々の生き様を、酒井と島地のデュオで体現してゆく。吾妻徳穂が踊るのは、自身の振付『五障 Gosho (おさんと小春より)』 。近松の代表作『心中天の網島』の妻おさんと遊女小春の姿を借り、女性が持つとされた五つの障り(煩悩、業、生、法、所知)を演じてみせる。そこに共通して描かれるのは、近松作品に蠢く女たち。現代を生きるダンサーが、近松作品の世界観を通し、今も昔も変わることのない人間の業と普遍の愛をあらわにする。
文:小野寺悦子
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年10月号から)

Aプログラム 10/9(金)〜10/11(日) 
Bプログラム 10/16(金)〜10/18(日)
新国立劇場(小)
問:新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999 
http://www.nntt.jac.go.jp/dance