
20周年と聞いて「時がたつのは早い」と思ったのは私だけではないだろう。東京・代々木公園にあるHakuju Hallで毎年夏に開催されている「Hakuju ギター・フェスタ」は、2026年で20回目となる。そこでこのフェスタの立ち上げに関わり、プロデューサーとしても活躍してきた荘村清志、福田進一の両氏に、この20年間の日本ギター界の変化なども含めて振り返ってもらった。
「確かにあっと言う間の感じはありますが、このフェスタに参加してくれたギタリストの顔ぶれを見ると、本当に日本のクラシック・ギタリストは若い世代が活躍するようになりましたね」と福田。あまり感情を表に出さない荘村も、その発言にちょっとニコッとしながらうなずいている。
第20回は、このフェスタらしいテーマは設けず、まさに「20周年記念ガラ・コンサート」として、過去に出演した奏者と「旬のギタリスト」として紹介されてきた若手ギタリストたちが集合し、同時に巨匠ふたりがデュオの新作を最後に披露するなど、これまでのフェスタのコンセプトは変えていない。
福田「新作を委嘱した大坪純平さんは1985年生まれのギタリストですが、作曲の才能にも実は前から注目していて、それで記念すべき第20回にお願いしました」
新作「アワムーリの祝宴」は、Hakuju Hallだけでなく、大阪のあいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホールとの共同委嘱作品となり、8月23日のフィナーレ後半での世界初演でその姿を現すのが楽しみだ。フィナーレでは、もちろん福田、荘村もそれぞれがソロで演奏するのだが、福田はソルとバッハ、荘村は武満徹である。
福田「僕の場合は、他の日のプログラムを見渡して、そこで取り上げられていない作品をあえて選んでみました」
荘村「今年は武満徹さんの没後30年にあたり、やはり武満作品を入れない訳にはいかないということで、僕は『エキノクス』『森のなかで ギターのための3つの小品』などを選びました。今年は各地で武満作品を弾いていますが、武満さんの書法は本当に見事で、ギターの奏法を相当研究し、無理のない動きで演奏ができるように書かれている。ギターを深く理解して、作品を書かれていたことに、今あらためて感激しています」

今回のフェスタをざっと紹介すると、8月21日のオープニング前半には秋田勇魚&猪居亜美、後半には沖仁&鈴木大介&菅沼聖隆が登場し、その後半では3人がそれぞれの解釈によるソロで、スペイン民謡の「禁じられた遊び」を弾くという。2日目の22日午前には「旬のギタリストを聴く」に、宮川春菜が登場。2002年生まれで、アンドレス・セゴビア国際コンクール(リナレス)で優勝するなど、世界でも活躍する注目の若手である。22日午後の前半には松尾俊介&小暮浩史、後半には河野智美&大萩康司が登場し、各々の得意な時代、地域の作曲家を取り上げる。23日フィナーレは、前半に徳永真一郎&岡本拓也&松田弦が、トリオで西村朗の「PIPA」を演奏し、それぞれがソロも聴かせてくれる。そして後半はプロデューサーふたりの共演だ。
ギターのレパートリーは一般的にはあまり知られていない作品が多いかもしれないが、ここに集まるギタリストたちの熱演を聴いていると、この楽器によって広がる音楽がとてもワールドワイドなものであり、同時に意外と身近なものでもあると気が付くかもしれない。またソロでもデュオでもトリオでも、それ以上のアンサンブルでも、ギターの魅力は様々な彩りを持っていることが分かるはず。
福田「ギターという楽器はクラシックだけでなく、民俗音楽、もちろんロックなど現代のポップの世界でも必ず使われています。その幅の広さによって多くの人の耳に届く可能性がある訳で、これからも様々なジャンルをまたいだ選曲も増えていくだろうと思います」
荘村「僕がスペインに留学したのは16歳の時でした。その時代から考えると、本当にギターの世界は広くなったと感慨深いです」
ますますの発展を期待したい「Hakuju ギター・フェスタ」である。
取材・文:片桐卓也 写真:阿部章仁
(ぶらあぼ2026年8月号より)
第20回 Hakuju ギター・フェスタ 2026 20周年記念ガラ・コンサート
8/21(金)〜8/23(日) Hakuju Hall
《Day1》
2026.8/21(金)16:00 オープニング
前半:秋田勇魚 & 猪居亜美(アンコール・ゲスト:荘村清志)
後半:沖 仁 & 鈴木大介 & 菅沼聖隆(アンコール・ゲスト:福田進一)
《Day2》
8/22(土)11:00
旬のギタリストを聴く 宮川春菜 リサイタル
8/22(土)15:30
前半:松尾俊介 & 小暮浩史(アンコール・ゲスト:荘村清志)
後半:河野智美 & 大萩康司(アンコール・ゲスト:福田進一)
《Day3》
8/23(日)15:00 フィナーレ
前半:徳永真一郎 & 岡本拓也 & 松田 弦(アンコール・ゲスト:荘村清志、福田進一)
後半:荘村清志 & 福田進一
問 Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700
https://hakujuhall.jp
※公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。

片桐卓也 Takuya Katagiri
1956年8月、福島県生まれ。早稲田大学在学中からフリーランスとして仕事を始め、映画、旅、自動車などの雑誌に関わる。1990年ごろから本格的にクラシック音楽関係の取材を始め、音楽雑誌に寄稿している。他に、コンサートの曲目解説、録音のライナーノーツの執筆なども多数。余裕があれば、バロック期のオペラを聴きにヨーロッパへ出かけている。趣味は都会の廃墟探訪。

