【CD】イン・ザ・フィールズ/ヴィジョン弦楽四重奏団

指揮者・沼尻竜典の呼びかけで結成され、2025年に創設30周年を迎えたトウキョウ・ミタカ・フィルハーモニアのライブ録音である。彼らの本拠地である三鷹市芸術文化センター 風のホールで開かれた2025年3月と7月の定期演奏会で、シューベルトの交響曲第7番「未完成」と第8番「ザ・グレイト」が取り上げられた。「未完成」では過度に悲劇的な表情を強調いま世界トップランクにいるカルテットならではのコンセプチュアルなCD。バルトーク4番第2〜5楽章を分けて配置し、ラヴェルやドヴォルザークのダンサブルな楽章、それらにインスパイアされたオリジナルのリミックス・ピースを挟み、ピアノ、ギター、パーカッションとのセッションで、音によるフィールドワークが展開……という感じで、センスあふれるライブハウスの一夜として楽しむべき1枚。打楽器付きのバルトーク第2・4楽章はたしかに面白く発見も多いが、原曲通りの第5楽章の完璧かつ強烈なパフォーマンスは比類がなく、通常の演奏での全曲録音も強く期待したい。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2026年5月号より)

【information】
CD『イン・ザ・フィールズ/ヴィジョン弦楽四重奏団』

ラヴェル:弦楽四重奏曲より第2楽章/フロリアン・ヴィライトナー:ラヴェル・リローデッド/バルトーク:弦楽四重奏曲第4番より第2〜5楽章/ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第13番より第3楽章/マハン・ミララブ:コンヴァレセンス 他

ヴィジョン弦楽四重奏団 他

ACT/東京エムプラス
ACT 90702S ¥オープン価格


林 昌英 Masahide Hayashi

出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。