
バロック・ヴァイオリンの名手にして、指揮者としても目覚ましい活躍をみせる佐藤俊介。これからの日本の古楽だけでなく、クラシック界全体のキーマンになることは間違いない逸材だ。その佐藤が東京交響楽団の選りすぐりのメンバーと、バッハのブランデンブルク協奏曲を中心にしたプログラムを演奏する。
ザクセン選帝侯領の首席森林官と猟場番を務めたフレミング。彼の著作に記されているファンファーレで演奏会は開始される。狩りのホルンを首席奏者の上間善之らが野趣もたっぷりに奏でてくれよう。
ブランデンブルク協奏曲は第2番と6番を除いた4曲を演奏する。佐藤のリードで、モダン楽器による東響メンバーが一体となって直線と曲線がしなやかに入り交じった演奏を期待していいだろう。第1番ではファゴット首席の福井蔵、第4番はリコーダー・パートを務めるフルート首席の竹山愛、濱﨑麻里子らのソロ・パートにも注目したい。第5番では国内外のアンサンブルで活躍するチェンバロ奏者、重岡麻衣のカデンツァも楽しみだ。
フックスによる7声のロンドでは、佐藤のソロ・ヴァイオリンがその優雅な調べをアンサンブルに波及していく様子が目に浮かぶ。そして、テレマンの協奏曲では、首席オーボエ奏者の荒木良太らと佐藤のヴァイオリンが綿密に絡み合って、生き生きしたグルーヴを作り出してくれるはず。関東ではミューザ川崎のみの公演だ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2025年10月号より)
佐藤俊介(指揮/ヴァイオリン) 東京交響楽団
川崎定期演奏会 第103回
2025.10/18(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
https://tokyosymphony.jp
他公演
10/19(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール(025-224-5521)

鈴木淳史 Atsufumi Suzuki
雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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