森 麻季 ソプラノ・リサイタル2015

慈しみと愛を歌にのせて

©Yuji Hori
©Yuji Hori

 華麗なる装飾歌唱のテクニックと、高音域に秀でた透明感溢れる歌声で、これまでに国内外で輝かしいキャリアを積み重ねてきた森麻季。華やかさだけでなく、「音楽の持つ力」や「オペラ歌手として果たす役割」についてしっかりとした考えを持ち、何かと不安な今の時代に、人々の気持ちを和ませるような音楽を届けることを信条に活動を続けていることも、その不動の人気を支えている。2001年にアメリカ同時多発テロが起きた際には首都ワシントンD.C.に居合わせ、直後に上演されたワシントン・ナショナル・オペラの公演にも参加した彼女にとって、「音楽を通して、平和を祈ることができるコンサート」にかける想いは本物。11年に東日本大震災から1週間後に公演を行った横浜で、毎年9月に行っているリサイタルは、聴衆と彼女がその「願い」をひとつに共有できるかけがえのない時間だ。
 今年のプログラムは、オペラ《カヴァレリア・ルスティカーナ》の間奏曲に歌詞を付けた「アヴェ・マリア」(マスカーニ)を始め、被災地支援と関わりの深い「翼をください」(村井邦彦)や「花は咲く」(菅野よう子)、NHKのスペシャル・ドラマの主題歌として話題を呼んだ「Stand Alone」(久石譲)など、いずれも心を揺さぶられる佳曲ばかり。また生誕330周年を記念した〈涙の流れるままに〉や〈つらい運命に涙はあふれ〉らヘンデルのオペラ・アリア特集も彼女の当たり役だけに必聴。心に明かりが灯るひとときを!
文:東端哲也
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年7月号から)

9/12(土)14:00 横浜みなとみらいホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040/神奈川芸術協会045-453-5080
http://www.japanarts.co.jp