
いずみシンフォニエッタ大阪は第54回定期演奏会を「西村朗 −魂の軌跡」と題し、大阪出身で2023年9月7日に亡くなった日本の現代音楽を代表する作曲家、西村朗の室内オーケストラ作品を特集する。2000年のいずみシンフォニエッタ大阪発足から音楽監督を務めた西村(現在は名誉音楽監督)が、同楽団のために残した作品は10作。今回はその中から特に彼の魅力を伝える3作品を取り上げる。
室内交響曲第1番は2003年に初演された、いずみシンフォニエッタ大阪から西村への単独委嘱第1作。彼の特長である巧緻なヘテロフォニーが1管編成のオーケストラから凄まじいエネルギーを引き出し、同楽団の重要なレパートリーとなった作品である。続いて置かれたのが最後の完成作となった三重協奏曲「胡蝶夢」だ。中国の思想家、荘子の『胡蝶の夢』の説話に基づいた、ヴァイオリン(小栗まち絵)、ハープ(篠﨑和子)、クラリネット(上田希)の独奏が絡み合う作品。高度な書法はそのままにどこか明るさも帯びた響きは、西村の晩年の境地を表したものと言えるかもしれない。そして2015年の室内交響曲第5番「リンカネイション(転生)」は、新古今和歌集をテキストに死と魂の転生を描いた声楽付き作品。西村が作曲中から想定していたソプラノの太田真紀の歌唱が、圧倒的な感動を誘うことだろう。
指揮は西村作品の多くの初演を手掛けたいずみシンフォニエッタ大阪常任指揮者の飯森範親。ソリストにはすべて初演時の顔ぶれが揃う。作品の真髄を示すと同時に、多くの演奏家と聴衆に愛された作曲家・西村朗その人への感謝の想いも伝わるコンサートになることだろう。
文:逢坂聖也
(ぶらあぼ2025年7月号より)
【出演者変更】
小栗まち絵(ヴァイオリン)は、不測の事故による負傷のため、急遽出演することができなくなりました。
西村朗:三重協奏曲〈胡蝶夢〉のヴァイオリン・ソロは、高木和弘が務めます。
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。(7/8主催者発表)
いずみシンフォニエッタ大阪 第54回定期演奏会 西村 朗 —魂の軌跡
2025.7/12(土)16:00 大阪/住友生命いずみホール
問:住友生命いずみホールチケットセンター06-6944-1188
https://www.izumihall.jp

逢坂聖也 Seiya Osaka
大阪芸術大学卒業後、大手情報誌に勤務。映画を皮切りに音楽、演劇などの記事の執筆、配信を行う。
2010年頃からクラシック音楽を中心とした執筆活動を開始。現在はフリーランスとして「ぶらあぼ」「ぴあ」「音楽の友」などのメディアに執筆するほか、ホールや各種演奏団体の会報誌に寄稿している。
大阪府豊中市在住。