ルツェルン&ザルツブルク――夏のヨーロッパを代表する2大音楽祭を巡る12日間の旅

ルツェルン・カルチャー・コングレスセンター ©Patrick H rlimann(Lucerne Festival)

ペトレンコ、ラトル、メスト、ネゼ=セガン
名匠たちのタクトをライブで堪能するプレミアムツアー

文:池田卓夫

 8月下旬の日本の猛暑から逃れ、アルプス山脈の雄大な景色を眺めながらスイスのルツェルン、オーストリアのザルツブルクの2大音楽祭を堪能、両者の中間にあるチロルの古都インスブルックの風情も味わえるツアー。涼しさも相まって、なかなかに魅力的だ。

世界遺産と大自然に囲まれた街でスーパーオーケストラを聴く

 前半はルツェルン音楽祭。ルツェルンはスイス中央部に位置し、美しい湖と奥に連なるアルプスの山々、中世からの建物が織りなす絵のような風景で人々を魅了する古都だ。ルツェルン湖に面し、ロイス川の両岸に発展してきた街の歴史は、花に飾られた木製のカペルブリュッケ(カペル橋)やイエズス教会、ライオン記念碑などの歴史的建造物からもたどることができる。リヒャルト・ワーグナーが家族とともに1866年から1872年まで暮らしたルツェルン郊外トリプシェンの邸宅は今日、記念館として一般に公開されており、今回のツアーでも訪問する予定だ。

カペル橋
イエズス教会
アルプスの山中を走るユングフラウ鉄道 ※オプショナルツアー
リギ山からは湖と山々が広がる景色も ※オプショナルツアー

 ルツェルン音楽祭は1938年、ドイツのナチス政権によるオーストリア併合を受け、ザルツブルク音楽祭から締め出された音楽家の受け皿として始まった。スイス各地のオーケストラ奏者やユダヤ系演奏家を集めた祝祭管弦楽団を指揮したのはイタリアの巨匠、アルトゥーロ・トスカニーニだった。1944年以降は第二次世界大戦後の一時期を除き、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーが毎年客演、亡くなる年の1954年に指揮したベートーヴェンの放送録音は「ルツェルンの『第九』」として今も名演の誉れが高い。1999年にはフランスの建築家ジャン・ヌーヴェルが設計した新しい演奏会場、ルツェルン・カルチャー・コングレスセンターが完成。2003年にクラウディオ・アバドがルツェルン祝祭管弦楽団の芸術監督に就くと、グスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団出身の若手に世界の名手を交えたスーパー・オーケストラに生まれ変わった。

ルツェルン・カルチャー・コングレスセンター ©Priska Ketterer(Lucerne Festival)
ルツェルン祝祭管弦楽団 ©Priska Ketterer(Lucerne Festival)
ルツェルン祝祭管弦楽団 ©Priska Ketterer(Lucerne Festival)

現代最高峰の指揮者で堪能する一夜限りの名演

 今回のツアーで聴くルツェルン祝祭管の公演は2つ。8月23日はサイモン・ラトルの指揮。前半は2025年が没後50年にあたるショスタコーヴィチ最初の交響曲(第1番)、後半はアメリカ人テノールのクレイ・ヒーリーとチェコスロバキア(現・チェコ)出身のメゾソプラノでラトル夫人のマグダレーナ・コジェナーが独唱を務めるマーラーの「大地の歌」。2人の作曲家の強い関連性を確かめられる。8月26日はフィラデルフィア管弦楽団とメトロポリタン歌劇場の音楽監督を兼務するフランス系カナダ人指揮者、ヤニック・ネゼ=セガン。2015年ワルシャワのショパン国際コンクール優勝者の韓国人チョ・ソンジンが独奏するベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番、ブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」からなるドイツ=オーストリア音楽の王道プログラムを味わい尽くす。

サイモン・ラトル ©BR-Astrid Ackermann(Lucerne Festival)
ヤニック・ネゼ=セガン ©Patrick H rlimann(Lucerne Festival)
チョ・ソンジン ©Stefan Hoederath(Lucerne Festival)

モーツァルトの故郷で味わうヨーロッパ最高峰の音楽祭

 ザルツブルクはウィーン(人口180万人)、グラーツ、リンツに次ぐオーストリア第4の都市だが、人口は15万人ほど。ドイツ語でザルツは「塩」、ブルクは「砦」。近郊で採掘した岩塩を製塩後、ザルツァッハ川を通じてヨーロッパ各地に出荷する拠点だった。川とメンヒスベルクの丘陵の間にユネスコ世界遺産の旧市街が広がり、中心部のゲトライデ通りにはヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの生家がある。丘の上の要塞、ホーエンザルツブルク城は街のどこからでも見える。基本的に散歩が楽しい街であり、かつて欧州楽壇の「帝王」と呼ばれた指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンが生まれた家の記念プレートも、簡単に見つけることができるはずだ。

ミラベル庭園
ブルックナーがオルガニストを務めたザンクト・フローリアン修道院 ※オプショナルツアー
修道院ではブルックナーオルガンの演奏も※オプショナルツアー

 ザルツブルク音楽祭(正式には演劇も網羅した祝祭)は1920年、演出家マックス・ラインハルトと劇作家フーゴー・フォン・ホフマンスタール、作曲家リヒャルト・シュトラウスのイニシアチブで始まった。現在は世界トップクラスのアーティストが集まるクラシック音楽界最大級の“ショーウィンドウ”であり、主にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団がピットに入るオペラ上演の質の高さでも際立った地位を維持している。

ウィーン・フィル、ベルリン・フィルを連日鑑賞!
世界の頂点を一気に聴き尽くすこれ以上ない贅沢

 今回のツアーではオーケストラ2公演、しかもヨーロッパ管弦楽団界の「両横綱」を一気に聴けるのが素晴らしい。8月30日はリンツ出身、米クリーヴランド管音楽監督のフランツ・ウェルザー=メストが指揮するウィーン・フィルハーモニー管弦楽団。前半ではワルシャワ生まれのユダヤ人でありながらナチス侵攻を逃れて旧ソ連に亡命、そこでも過酷な運命に翻弄されたヴァインベルクの交響曲第2番というレアものが聴ける。後半はブルックナーが第3楽章までしか完成できなかった最後の交響曲(第9番)。8月31日は音楽監督キリル・ペトレンコに率いられて客演するベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。このコンビが今シーズン、各地で演奏しているマーラーの交響曲第9番だけに、練り上げられた演奏を期待できる。会場はいずれも祝祭大劇場。

 別途手配公演の「目玉」もやはり、ザルツブルク音楽祭のオペラだろう。8月29日のヴェルディ《マクベス》の夫人役アスミク・グリゴリアン、30日のドニゼッティ《マリア・ストゥアルダ》の題名役リセット・オロペサという当代きってのプリマドンナ競演への興味は尽きない。29日には舞台が岩に囲まれた往年の乗馬学校跡の演奏会場、フェルゼンライトシューレでギリシャの鬼才テオドール・クルレンツィスが指揮するラモーのバロック歌劇《カストールとポリュックス》の演奏会形式上演もある。

郵船トラベル
夏の音楽祭めぐり!ルツェルン~インスブルック~ザルツブルク 12日間

<2025年8月22日出発>
旅行期間:2025.8/22(金)~9/2(火)
出発地:東京
日数:12日間

スケジュール(クリックして詳細を表示)

◎:入場観光 ○:下車観光 ★:オプショナルツアー
●8/22(金)
11:45 羽田発、フランクフルト乗り継ぎにてチューリッヒへ
21:50 チューリッヒ着 、専用バスにてルツェルンへ(所要約1時間10分)
ホテルにチェックイン

●8/23(土)
10:00 ルツェルン徒歩観光(○カペル橋、◎イエズス教会、○ライオン記念碑など)
12:00 市内レストランにてご昼食後、自由行動
17:45 徒歩にてカルチャー&コングレスセンターへ(所要約10分)
【鑑賞】ルツェルン祝祭管弦楽団(18:30開演 カルチャー&コングレスセンター コンサートホール)

●8/24(日)
午前 自由行動
14:30~16:15 トリプシェン(ルツェルン近郊)観光(◎リヒャルト・ワーグナー記念館)
※往路は湖船(乗船時間:約10分)、復路は専用車。

●8/25(月)
終日自由行動
★ユングフラウヨッホ観光 ※往復列車利用(昼食付/7:45~20:00)

●8/26(火)
自由行動
★リギ山観光
※往路:湖船+登山列車、復路:登山列車+列車(食事なし/8:45~13:30)
18:45 徒歩にてカルチャー&コングレスセンターへ(所要約10分)
【鑑賞】ルツェルン祝祭管弦楽団(19:30開演 カルチャー&コングレスセンター コンサートホール)

●8/27(水)
9:00 専用バスにて美しい山間のリゾート地レッヒへ(所要約3時間30分)
12:30 昼食。レッヒ散策
15:00 専用バスにてインスブルックへ(所要約2時間)
17:00 ホテルにチェックイン

●8/28(木)
8:30~12:00 インスブルック観光(○黄金の小屋根、○王宮、◎宮廷教会、◎聖ヤコブ教会など)
午後 自由行動

●8/29(金)
8:45 専用バスにてザルツブルクへ(所要約2時間50分)
11:45 昼食。
ザルツブルク観光(○ミラベル庭園、○モーツァルトの生家、◎大聖堂、○モーツァルトの住居など)
15:30 ホテルにチェックイン

●8/30(土)
10:00 専用車にて祝祭大劇場へ(所要約10分~15分)
【鑑賞】ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(11:00開演 祝祭大劇場)
終演後、自由行動

●8/31(日)
自由行動
★ブルックナーゆかりの地~アンスフェルデン(生家)&ザンクト・フローリアン修道院観光(昼食付/8:30~17:00)
※ブルックナー・オルガンの鑑賞あり
19:45 専用車にて祝祭大劇場へ(所要約10分~15分)
【鑑賞】ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(20:30開演 祝祭大劇場)
終演後、専用車にてホテルへ

●9/1(月)
8:15 ホテルを出発、専用バスにてザルツブルク空港へ(所要約30分)
10:30 ザルツブルク発フランクフルト乗り継ぎにて帰国

●9/2(火)
9:50 羽田着

問:郵船トラベル 音楽・美術ツアー専用デスク03-6774-7940
https://www.ytk.jp/music/