ソニックシティが総力を結集、酒井健治作曲の新作オペラ《平家物語−平清盛−》を10月に上演

脚本は大河ドラマ『篤姫』『江』の田渕久美子、「FANTASTICS」ボーカル・八木勇征も出演

 埼玉県産業文化センター(ソニックシティ)の主催により上演される新作オペラ、《平家物語−平清盛−》の記者発表が5月19日、都内で行われた。脚本の田渕久美子、作曲の酒井健治に、下野竜也(指揮)、田尾下哲(演出)、そしてキャストの池内響(バリトン/平清盛)、川越未晴(ソプラノ/平徳子)らが登壇。

左より:加藤喜久雄(埼玉県産業文化センター 理事長)、田渕久美子、酒井健治、下野竜也、田尾下哲、池内響、川越未晴

 首都圏有数のターミナル駅・大宮のランドマークとして、1988年にオープンしたソニックシティ。以降、地域の人々に良質な文化事業を提供することを目的に、クラシック音楽を中心とする自主公演事業を行っており、その優れた音響でアーティストから高い評価を獲得している。そんな同ホールがリニューアルを経た2023年、開業35周年を迎える記念事業として企画したのが《平家物語−平清盛−》。節目にあたり、世界に向けて日本の文化をオペラという総合舞台芸術の形で発信していきたいという想いのもと、“諸行無常”“もののあはれ”など日本人の根底にある精神が表現された『平家物語』が題材に選ばれた。秩父銘仙や行田足袋など埼玉県の伝統的工芸品を衣裳に使用するなど、地域の文化拠点としての役割に重きをおくソニックシティならではの試みも予定されているという。

 コロナ禍による延期を経て、今年10月に満を持して開催される公演のキャストには、池内や川越、池田香織(メゾソプラノ/平時子)ら国内のオペラシーンを彩る歌い手、邦人作品の演奏で定評のある下野&読売日本交響楽団など、クラシックファンにおなじみの名前が並ぶ。さらに、ダンス&ボーカルグループ「FANTASTICS from EXILE TRIBE」のボーカルで、俳優としても多数のドラマにも出演するなど若い世代から高い人気を誇る八木勇征の登場も大きなトピックだ。

 脚本を手掛けた田渕は『篤姫』や『江~姫たちの戦国』などをはじめ、数多くのヒットドラマを手掛けたことで知られているベテランだが、オペラの脚本の執筆は今回が初。

田渕久美子

田渕「これまで大河ドラマを担当させていただいた際は、活躍している男性のそばには必ずいる、女性の存在というものに光を当てて描きました。この作品でも、平清盛の妻である時子、そして娘の徳子を一つの縦軸にし、戦火の絶えない今だからこそ、『女性たちが戦争や平和に対して何を思うのか』ということを彼女たちに事寄せて書きましたので、そこに注目していただければ嬉しいです。
 オペラの初心者という立ち位置を逆に生かした試みも行いました。錚々たる歌手の皆さまが集まる中、『歌わない役』というのをどうしても1人、設定したいと思ったのです。それが琵琶法師という役で、物語を牽引する語り部を担います。演じていただく八木さんは、舞台に出ただけで人を“魅せる”力を持っていますし、ファンの若い方たちがオペラを観る機会を得てくださることで、日本の音楽業界もさらに盛り上がっていくのではないかと思います」

 武満徹作曲賞やエリザベート王妃国際音楽コンクール作曲部門大賞など国内外の著名な作曲賞を数多く受賞、京都市立芸術大学の教授を務める酒井。現代日本の音楽シーンを代表する作曲家だが、田渕と同じくオペラは初挑戦だという。

酒井健治

酒井「プロジェクトのお話自体は2017年ごろにいただき、そこから構想自体は練り始めていたのですが、本格的に作曲を始めてから完成までは約1年で、この短い期間で2時間以上にわたる作品を書くのはかなりハードではありました(笑)。
 そんな状況の中で、オペラ作曲のモチベーションを大きく左右する脚本を、田渕さんに書いていただけたのは本当に良かったと思います。あまりにも素晴らしく、一読するだけで『この場面はこう聴かせるべきだ』というのが分かり、メロディやハーモニーが自然と頭に浮かぶのです。ですので、書き急いだ感覚は全くなく、非常に満足して完成させられたと考えています」

 これから作品を作り上げていく他の登壇者(下野、田尾下、池内、川越)の言葉からもこのプロダクションに対する高いモチベーションが感じられ、チーム一丸となって上演に向けた準備を進めていることが伺えた。さらに、出席が叶わなかった八木はビデオメッセージを寄せ、「オペラ、そしてクラシックは奥が深い音楽だという印象を持っています。普段活動しているジャンルとは全く異なりますが、語り部という重要な役で出演できることはとても光栄で、はやくステージに立ちたい気持ちでいっぱいです」と意気込みをあらわにした。

映像でコメントを寄せた八木勇征

 ソニックシティの想いのもとに日本を代表する制作陣・キャストが集結した《平家物語−平清盛−》。唯一無二のプロジェクトの成果が結実する瞬間が待ち遠しい。

取材・文:編集部


新作オペラ《平家物語−平清盛−》(全2幕 日本語上演)
2025.10/4(土)、10/5(日) 各日14:00 埼玉/ソニックシティ

作曲:酒井健治
脚本:田渕久美子
演出:田尾下哲

〇出演
指揮:下野竜也
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:日本オペラ協会合唱団

平清盛:池内響
平徳子:川越未晴
平時子:池田香織
平前子:林眞暎
源義経/牛若丸:村松稔之
源義朝:小堀勇介
平重衡:工藤和真
高倉帝:新堂由暁
源頼朝:高橋宏典
後白河:木村善明

琵琶法師:八木勇征(FANTASTICS)

問:ソニックシティホールメンバーズ事務局048-647-7722
https://www.sonic-city.or.jp