国際的に高い評価を受ける作曲家、細川俊夫(1955- )が、スペインのBBVA財団が主催する第17回「フロンティアーズ・オブ・ナレッジ・アワード Frontiers of Knowledge Award」の音楽&オペラ部門の受賞者に選出された。この賞は“スペインのノーベル賞”とも呼ばれるもので、科学や芸術など8つの分野で、特に独創性、重要性をもって多大な貢献をした人物に贈られる。同部門では、これまでにブーレーズ、ライヒ、クルターグ、グヴァイドゥーリナ、サーリアホ、アデス、ペルト、エトヴェシュ、グラスなど錚々たる作曲家たちが受賞している。

禅の哲学にインスパイアされ、雅楽や能楽などの日本の伝統音楽に根ざした要素を取り入れつつ、独自の音響世界を築いてきた細川。審査委員会は、その作品が「日本の音楽的伝統と現代西洋の美学との間に架け橋を築いた」と評価した。また、メキシコの作曲家で審査委員長を務めるガブリエラ・オルティスは、細川の音楽においては「静寂は構造的要素として音楽的思考の一部となっており、東洋の文化から引き出す内省の要素なのである」と指摘。とりわけ、オペラ《班女》(2004)や《松風》(2011)のような日本的要素が深く織り込まれた作品を「現代音楽のマイルストーン」であるとした。
東洋と西洋の文化を巧みに融合させ、独自の創造性と革新性の地平を切り開く細川だが、今月28日には、オペラ《二人静ー海から来た少女ー》がスペインのバレンシアで上演される。また、4月初旬には、初の子どものために作曲された、語り手とアンサンブルのための作品「遠くから来たきみの友だち」(2021年ルクセンブルクで初演)の日本初演も予定されている。多和田葉子の書き下ろしによる物語が、作曲家の手でどのような世界として描き出されるのか。日本の若手実力派が集結して初演されるこちらのステージにも注目したい。
文:編集部
FRONTIERS OF KNOWLEDGE AWARDS
https://www.frontiersofknowledgeawards-fbbva.es/
春休み特別企画
— 子どもと大人に贈る語りと音楽 — 遠くから来たきみの友だち
2025.4/4(金)15:00 成城ホール
毛利文香(ヴァイオリン)
田原綾子(ヴィオラ)
上野通明(チェロ)
上野由恵(フルート)
西川智也(クラリネット)
西久保友広(打楽器)
北村朋幹(ピアノ)
藤井玲南(ソプラノ/語り)
シューベルト:春への想い D686/野ばら D257/ます D550/セレナーデ D957/ミューズの子 D764
細川俊夫:語り手とアンサンブルのための《遠くから来たきみの友だち》
問:せたがや文化財団 音楽事業部03-5432-1535
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