神戸市室内管&混声合唱団が2025シーズン・プログラムを発表
「ミサ・ソレムニス」「第九」連続演奏も

左:佐藤正浩(神戸市混声合唱団音楽監督) 
右:鈴木秀美(神戸市室内管弦楽団音楽監督)

 2月28日、神戸市室内管弦楽団および混声合唱団の2025シーズン・プログラム(25年4月~26年3月)発表記者会見が行われ、それぞれの音楽監督を務める鈴木秀美と佐藤正浩が出席した。
 
 新シーズンの目玉は、両団体の本拠地・神戸文化ホールの開館50周年記念事業として開催される「ベートーヴェン・ダブルビル」。両団体が共同で、「ミサ・ソレムニス」(11/15)と交響曲第9番「合唱付き」(11/16)を2日続けて演奏する。自治体としては珍しく、プロのオーケストラと合唱団の両方を持つこの街ならではの企画だ。
 両公演のソリストは中江早希(ソプラノ)、布施奈緒子(アルト)、櫻田亮(テノール)、氷見健一郎(バス)、指揮は鈴木が務める。

「知名度に大きな差がある両曲ですが同時期に書かれています。『ミサ・ソレムニス』を聴いた翌日に、前日の響きをまだ忘れていない耳で『第九』を聴いていただくことで、『第九』の第3楽章や第4楽章の途中の部分などの聴こえ方が大きく変わってくると信じています。
 オーケストラ、合唱団にとっては、音楽の複雑さが異なる2曲のリハーサルを同時に行うわけですから、非常にハード。実はそれを狙っている面もあり、お客さんとともに演奏する側も、両方の作品に取り組むことでベートーヴェンの頭の中を追体験したいと思います」

 神戸市室内管の定期演奏会は全5公演。鈴木はそのうち「第九」を含む全3公演に登場。
 6月は「トルコ趣味はいかが?」をテーマに、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」(独奏:ロザンネ・フィリッペンス)、ハイドンの交響曲第100番「軍隊」、ベートーヴェンの交響曲第2番を、26年3月はシューベルトの交響曲第8番「ザ・グレート」に加え、鈴木が「まるで墨絵の世界のような、とても面白い音楽をする方」と語る務川慧悟をソリストに迎え、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番を取り上げる。
 客演陣では4月に、パリ管やミュンヘン・フィルへの客演経験も持つラトビア出身のアンドリス・ポーガが、9月には、札響の首席指揮者を務めていたことでも知られるドイツの巨匠、マックス・ポンマーが登壇する。

 その他、市内の音楽ホールで行われる休憩なし1時間のコンサート「セレクションシリーズ」は全2公演。
 8月の「小菅優・最前線 in KOBE」では、小菅がモーツァルトのピアノ協奏曲第25番に加え、藤倉大のピアノ協奏曲第3番「インパルス」を弾き振りで披露。「インパルス」は小菅が山田和樹&モンテカルロ・フィルと初演した作品だが、今回は、神戸市室内管に合うコンパクトな編成に、かつ小菅の弾き振りを想定して藤倉が新たに手を加えた版の世界初演となる。
 2026年1月は、指揮者・ピアニストの大井駿が登場。こちらも弾き振りで、26年が生誕150年のファリャ「恋は魔術師」より〈火祭りの踊り〉(弦楽とピアノ版)、同じく没後30年の武満徹の「3つの映画音楽」より〈ワルツ〉などを取り上げる。

プーランクの傑作に平和への祈りをこめて

 神戸市混声合唱団の定期演奏会は2回。9月は「人間の顔~戦後80年に捧ぐ」をテーマに掲げ、佐藤の指揮でリゲティ「ルクス・エテルナ」やプーランクのカンタータ「人間の顔」など、4曲を披露する。

 2021年から音楽監督を務める佐藤にとってこの2組の混声合唱によるカンタータは、就任当初から演奏を待ち望んだ作品だという。
「数ある合唱曲の中でも最高傑作と言われるアカペラ作品です。第二次世界大戦の最中に作曲され、1945年、終戦後のイギリスで初演されました。今年は戦後80年ということもあり、この曲を中心にプログラムを組みました。この世から戦争がなくなり、平和が訪れることへの祈りをこめて演奏したいです」

 26年3月の定期は尾高忠明が指揮。十八番のエルガー(曲目未定)、兄・尾高惇忠の混声合唱曲集「春の岬に来て」、武満徹「うたⅠ・Ⅱ」を振る。
 その他、佐藤が指揮する「合唱コンクール課題曲コンサート 2025」、独自の活動で注目を集める坂入健司郎のタクトによる「こどもコンサート 2025」といった企画も予定されている。

文:編集部
写真提供:神戸市民文化振興財団

神戸市民文化振興財団
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