【CD】葵トリオのピアノ・クァルテット plays モーツァルト&ブラームス ―ヴィオラの名手 磯村和英氏を迎えて―

 葵トリオが、師と仰ぐ磯村和英を迎えてピアノ四重奏曲を録音した。磯村は東京クヮルテットでヴィオラを創設から解散まで務めたレジェンド。モーツァルトの第2番は、冒頭から集中度が高く、実に爽やか。ピアノの走句もとてもきれいだ。どの部分も溌溂として活力に満ちている。緩徐楽章の弦とピアノのデリケートな対話も、軽やかなフィナーレも楽しい。ブラームスは20代後半の覇気を感じさせる。変化に富んだ楽想が詰め込まれた密度の濃い傑作だ。それをこの4人は見事に音化して、たっぷりと聴かせる。とりわけロマ風の終曲は、生命力に溢れている。このメンバーで是非とも他の四重奏曲も録音してほしい。
文:横原千史
(ぶらあぼ2025年3月号より)

【information】
CD『葵トリオのピアノ・クァルテット plays モーツァルト&ブラームス ―ヴィオラの名手 磯村和英氏を迎えて―』

モーツァルト:ピアノ四重奏曲第2番
ブラームス:ピアノ四重奏曲第1番

磯村和英(ヴィオラ)
葵トリオ【秋元孝介(ピアノ) 小川響子(ヴァイオリン) 伊東裕(チェロ)】

ナミ・レコード
WWCC-8026 ¥3300(税込)