地域に根ざした音楽との出会いの場、調布国際音楽祭2025の概要が発表

鉄道とのコラボ企画も

 今年で13回目を迎える調布国際音楽祭2025(主催:公益財団法人 調布市文化・コミュニティ振興財団、調布市)の概要が発表された。2月19日に行われた記者会見には、エグゼクティブ・プロデューサーの鈴木優人、ピアニストでアソシエイト・プロデューサーの森下唯らが出席。今回は鈴木が「ついに夢が叶った」と数年前より熱望していた市内の名刹・深大寺での会見となった。

深大寺本堂での会見より
左より)鈴木優人、上村文乃、森下唯

 音楽祭の会期は6月21日から29日まで。今回のテーマは「Journey Through Music!音楽の旅へ!」。グリーンホールや文化会館たづくりをメイン会場とし、深大寺本堂やせんがわ劇場など調布市内各所で公演が開催される。
 鈴木は“手作り”感を最も大切にしてきたと語る。
「この音楽祭は私にとってライフワークのような存在となりつつあります。幼馴染みの森下さんとともに調布の街を盛り上げるため、この音楽祭で多くの方々が集まる場所をつくることは、私の音楽家人生の中でも大きなテーマ。はじめは手探りの状態で冒険をするような音楽祭でしたが、愛してくださるお客様が増えてきているというのを感じています」

 一方、この音楽祭は「地方開催の音楽祭と都市で開催される音楽祭のちょうど中間あたりにある」と話す森下。
「深大寺での会見という、なかなかないことを考えて実行していくのが我らのエグゼクティブ・プロデューサー。そのおかげで新しい縁や出会いも生まれています。調布を音楽祭で盛り上げていくという目標が年月を重ねることによって、少しずつ実現しているなと実感しています」

 プログラムはジャンルを超えた多彩な公演が並ぶ。6月22日のオープニングコンサートには、「ビッグバンドガラ!Take the “A” train」と題し、吹奏楽とジャズの公演を開催。上野耕平(サクソフォン)と初登場となるぱんだウインドオーケストラ、松井秀太郎(トランペット)らのほか、市内の明治大学付属明治高等学校・中学校吹奏楽班が参加。若いパワーあふれる演奏が期待される。

 注目はベルギーを代表する古楽声楽アンサンブル、ヴォクス・ルミニスの初来日公演(6/26)。「Bach Dynasty〜華麗なるバッハ一族の音楽」と題し、J.S.バッハのほか、J.M.バッハやJ.C.バッハなどバッハ一族のプログラムを披露。鈴木もオルガンで参加する。
 音楽祭のレジデント・オーケストラとも言えるバッハ・コレギウム・ジャパンは、鈴木優人指揮、ヴォクス・ルミニスとの共演でヘンデルの歌劇《ロデリンダ》(演奏会形式)を上演。日欧の豪華歌手陣によるバロック・オペラを楽しみたい。

 鈴木優人の「趣味の一つ」という“鉄道”にフォーカスしたコラボ公演も。調布市を走る京王線にちなんだ「鉄道×音楽 Take the “Keio” train!」(6/28)では、鈴木のほか、鉄道マニアとして知られる上野耕平をはじめ、廣津留すみれ(ヴァイオリン)、森下唯(ピアノ)が出演、ゲストにモデルの市川紗椰を迎える。挾間美帆がこの公演のために新しく編曲した「Take the “A” train」や駅メロディによる即興曲など、ユニークなプログラムが用意された。鈴木と上野の鉄道愛トークにも期待。

 毎回、即売切となる深大寺本堂での公演(6/25)には、長くヨーロッパで活躍するリュート&テオルボ奏者の今村泰典が登場。自身の編曲によるバッハの無伴奏チェロ組曲第2番やスペインのルネサンス音楽をテオルボやビウエラで演奏する。そのほか、共にゲーム音楽の分野でも活躍する日独のピアニスト、ベンヤミン・ヌスと森下によるデュオコンサート(6/29)など注目公演が目白押しだ。

「洋の東西を問わず、祈りや人格の陶冶に音楽は欠かせない」と語るご住職。
本堂での公演は、非日常の空間で開演前に天台声明を楽しめるのも魅力のひとつ。

 フィナーレには音楽祭公式オケ、フェスティバル・オーケストラの公演が開催(6/29)。この日の会見にはビデオメッセージで参加した音楽祭監修の鈴木雅明が「今年はついに大きな編成の曲にチャレンジ」と力を込めるストラヴィンスキーのバレエ音楽「ペトルーシュカ」(1947年版)を演奏する。プログラム前半にはモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番を据え、ソリストには国内外で活躍するヴァイオリニスト・岡本誠司を迎える。

 チケットは4月10日一般発売。初の試みとなるセット券(3月12日より先行発売)の発売も発表された。

 会見の最後にはサプライズでミニコンサートが行われた。演奏は昨年の深大寺公演に出演したチェリスト・上村文乃。非日常的で厳かな空間の中、J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲第1番よりプレリュードが披露された。

「普段は教会で演奏することは多いが、お寺で演奏することは貴重な体験」と話す上村

写真・文:編集部

【Information】
調布国際音楽祭2025

2025.6/21(土)~ 6/29(日)
https://chofumusicfestival.com

◎セット券
ちょうふアートプラス会員・一般:3/12(水)先行発売

◎単券
ちょうふアートプラス会員先行発売:4/3(木)
一般発売:4/10(木)
※会員・一般ともに発売初日はインターネット販売のみ

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